受診までの「応急処置」

【切れ痔】“便の硬さ”によって市販薬を使い分け

お尻の血行を良くすることが大切
お尻の血行を良くすることが大切(C)日刊ゲンダイ

 切れ痔のほとんどは、便秘などで“硬い便”が出るときに肛門(肛門上皮)が裂けることが原因だ。しかし、慢性の下痢でも起こる場合がある。東肛門科胃腸科クリニック(東京・恵比寿)の東光邦院長が言う。

「便や腸液はアルカリ性ですが、肛門上皮は皮膚と同じ弱酸性です。下痢で頻繁に排便を繰り返すと、肛門上皮がただれて弱くなり、裂けることがあるのです」

 いずれにしても切れ痔になったら激痛が走るからと、排便を我慢するのが一番よくない。便が硬くなり、悪循環を起こすからだ。排便時に痛みを感じたら、とりあえず市販の痔の薬を使った方がいいという。どれも配合成分に大きな差はないが、剤形に種類がある。「座剤」と「軟膏(なんこう)剤(軟膏と注入軟膏)」が主流だ。

「裂けている部分は肛門の締まっているところから1~1.5センチの奥なので、指で塗る軟膏では薬が届きません。肛門に容器の先を入れて薬を送る注入軟膏を選ぶといいでしょう。便が硬くて出にくい場合は、肛門に軟膏を塗って座剤を入れる。座剤の基剤は油成分なので、溶けて便が出やすくなります」

 切れ痔に対する薬の使用と同時に、原因となる便の硬さの調節も重要。食事は、肉類を少なめにして食物繊維と水分を多く取る。いつも便秘や下痢に偏るなら、市販薬を使うのもいい。

「便秘では、『緩下剤(酸化マグネシウム)』や腸内細菌のバランスを整える『整腸剤』を選ぶのがいい。『刺激性下剤』は途中で効きが悪くなったり、クセになったりするので常用は勧めません。下痢なら整腸剤を使うのがいいでしょう」

 生活上の注意では毎日、お風呂の湯船につかり、お尻の血行を良くすること。椅子に長時間座っていることも、肛門周辺の筋肉が緊張するので排便時の痛みが余計増すという。デスクワークの人であれば、適度に休憩を取り、オフィス内でいいので少し歩いてお尻の筋肉をほぐそう。“冷え”も筋肉が緊張するので痛みが増す。排便前にお尻を温めたり、暖房便座を使うことは痛みの軽減につながるという。もちろん、痛いときは香辛料を多く使った食べ物は控えよう。

「市販薬で治っても、繰り返すようなら早めに受診して排便習慣を指導してもらった方がいい。何年も繰り返すと裂けた部分が潰瘍になって、肛門の奥にポリープができたり、肛門の外の皮膚が垂れてきて手術が必要になります」