当事者たちが明かす「医療のウラ側」

新人医師はつらいよ 実力もないのに“先生扱い”される苦悩

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
都内の20代勤務医

 地方の大学病院から都内の総合病院に移ったばかりの勤務医です。1日12時間近く仕事をしていますが、他の先生方に比べて経験も浅く、知識もないのでつらい日々を送っています。それでも看護師さんや患者さんから同じように「先生、先生」と言われるのに困惑しています。

 私の前では笑顔を向けるベテランの看護師さんが内心「困った先生ね、給与は私の倍以上もらっているくせに仕事は半分以下ね」と思っているのはそのしぐさで分かります。目の前に私がいるのに、「先生はいないの?」なんて露骨に私を無視することもあります。しかも、先輩医師も同じ年代なら女医には甘く、私にはきつい。雑用はすべて私の仕事で、大事な仕事はまかせてもらえません。あまりに悔しく、情けなく、トイレの個室で泣いたことは一度や二度ではありません。

 しかし一番つらいのは患者さんが、「医師に診てもらえば病名が分かり、治療は100%安全・安心」と思っておられることです。

 正直に言って医療はそれほど完全ではありません。ベテラン医師であっても患者さんの期待に応えられるのはせいぜい75%程度です。分からない病気があるのは当然で、私のような経験の浅い医師はせいぜい30~50%程度でしょう。それを患者さんには言えません。なんとか期待に応えようとして無理して診断と治療を続けているのです。ですから毎日ミスをするのではないか、とビクビクしながら過ごしています。怖いのは、一人で診察・治療をまかされること。休日診療や夜間診療は本当に恐ろしい。ですから、頼まれてもアルバイトはやらないようにしています。

 しかし、同期の中には30代で開業すると宣言する野心家もいる。私からみると、本当にそれだけ実力をつけているのか? と不思議に思います。