あの話題の治療法 どうなった?

PETによるがん検診は見逃しが多く単独では不十分

CTなどを組み合わせることが推奨されている
CTなどを組み合わせることが推奨されている(C)日刊ゲンダイ

 はやりすたりがあるのは治療法だけじゃない。診断法もまた流行がある。

 がん検診の切り札といわれたPET検診もそのひとつだ。

 PETは正式にはポジトロン・エミッション・トモグラフィー(ポジトロン断層投影装置)と呼ぶ。これを使ったがん検診がPETがん検診だ。1度の検査で全身をスクリーニングするため、「がん発見の万能検査」などともてはやされた。

 ところが、ひところの盛り上がりとは違い、がん検診には役立たないのではないか、との声が上がっている。なぜか。

 PETは、がん細胞が正常細胞に比べてブドウ糖を取り込みやすい性質に着目。ブドウ糖に似た成分の検査薬を点滴で体内に送り込み、撮影する。ブドウ糖が多く集まるところが、がんというわけだ。

「当初、PETは1センチ以下の小さながんも見つける、といわれましたが、炎症などとの鑑別が難しく、見落としも多い。がん検診には向かないという声があります」

 こう言うのは都内の大手病院に勤務する放射線治療医だ。

 PET検査は大腸がんや甲状腺がんには有効だが、その他のがんは見落としが多いといわれる。

 胃や腎臓、肝臓、膀胱、前立腺にブドウ糖は集まりやすく、そこにできるがんは見つけにくい。それが正常な集積なのか、がんが出来たせいなのか、分からないからだ。そのため、日本核医学会のがん検診ガイドラインでもPET単体でなく、CTやMRI、内視鏡と組み合わせることを推奨している。

■死亡率が下がるエビデンスはない?

 画像検査の専門的な学会である「米国核医学・分子イメージング学会」はさらに強い調子で「健康な人のがん検診には使ってはいけない」と断言している。健康な人のがんが発見できる確率が低く、健康な人がPET検査のみを受けることで、がんによる死亡率が下がるという科学的な報告がないからだ。

 この検査が有効なのは、がんが確認された後の重症度を調べたり、治療効果を判定するとき。そうでない場合は「無用な追加検査や不要な手術を招く可能性がある」という医師が少なくないことも覚えておこう。