クスリと正しく付き合う

病気を「予防」することが何よりも薬代の節約になる

予防こそ最大の節約策
予防こそ最大の節約策(C)日刊ゲンダイ

 これまで、「薬を適正に使うことが医療費の節約につながる」ことをお話ししてきました。しかし、何よりも節約になるのは「病気にならない」=「予防をする」ことです。

 当たり前の話ですが、病気にならなければ病院に行く必要もなく、薬を使う必要もないのです。

「健康寿命」という言葉もあるように、健康な状態で過ごすのと病気を患って過ごすのとでは、同じ日々でも「生活の質=QOL」は大きく違います。健康寿命を長く保つためには、予防は大切です。大がかりなことや大金を費やさなくとも、日常生活の工夫だけで病気予防になることはたくさんあります。手洗いやうがいをする、食生活に気をつける、運動量を増やす、しっかり睡眠をとる……意識してこれらを続けるだけでも十分に効果的なのです。

 予防や健康診断の受診を奨励したいと強く思うようになったのは、勤務する大学病院で、重い病気を抱えた患者さんに数多く出会ったからです。特にがん患者さんに接すると、予防しておけば……早期発見できていれば……と強く感じます。

■十分な睡眠、適度な運動も効果的

 いまや、日本人の2人に1人が一生に1度はがんを患い、3人に1人ががんで亡くなる時代です。すぐ隣にある脅威といっても過言ではなく、他人事とはいえません。

 がん治療や抗がん剤が進歩し、根治するがんも増えてきた今日でも、がんは大変な病気です。他の薬と比べると抗がん剤は副作用が強く、治療費も高額です。これによって2次的なストレスを感じる患者さんがたくさんいます。治療費は抗がん剤の種類によって幅はありますが、最低でも1カ月2万円、高額なものであれば1カ月で120万円かかる場合もあります。

 がん保険に加入するのもよいのですが、がん保険に入ればがんにならないわけではありません。ぜひ、予防と定期的な健康診断の受診をおすすめします。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。