当事者たちが明かす「医療のウラ側」

糖尿病の激増は地球温暖化が原因か

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 花見が終わると同時に気温が上昇、汗ばむ季節がやってきました。地球温暖化のせいか、私が子供の頃より暑くなった気がします。

 実際、世界の地上気温の経年変化を見ると、1880年と2012年を比べると年平均気温が0.85度上昇しているのだそうです。たかが1度程度と思われるかもしれませんが、平均気温が1度近く上がっているということは、個々をみれば相当な気温上昇があるわけで、暑く感じるのは当たり前です。

 問題は、こうした気温上昇が慢性疾患を持つ高齢者にとっては大きな負担になることです。

 5年ほど前に米国の研究チームが興味深い研究論文を発表しました。

 米国135都市に住む65歳以上の男女370万人の慢性疾患に関するデータと気候データとの関連を分析したところ、夏の気候に異変が表れて気温が1度上昇すると、糖尿病を持っている人では4.0%、心臓発作の既往歴のある人では3.8%、死亡率が上昇したというのです。

■慢性疾患で褐色脂肪細胞が減った

 慢性疾患を持っている高齢者は高温化への対応が難しい、と改めて思い知る話ですが、最近、さらに興味深い研究論文が発表されました。「人は地球温暖化の影響で脂肪が燃えにくい体に変化しており、それが原因で糖尿病が増えている」というのです。

 オランダの「ライデン大学医療センター」などの研究によると、米国では気温が1度上昇すると糖尿病の発症率が1000人当たり0.314人増加して、耐糖能異常の比率が0.17%も増えたそうです。理由は「脂肪を燃焼させて体温を維持する褐色脂肪細胞が高温により減少したから」だというのです。

 むろん、世界的な糖尿病患者の激増を高温による褐色脂肪細胞の減少だけで説明するのは乱暴だと思います。世界中が飽食になったことや、高温により感染症をもたらす生き物が活発になって感染症が広がり、それにより遺伝子に変化が起きて、糖尿病が増えたのかもしれません。可能性はいくらでも考えられます。

 ただ、世界保健機関(WHO)の発表では、成人の糖尿病患者数は1980年の1億800万人から、2014年には4億2200万人と激増しているのは確かです。糖尿病が「過食」と「運動不足」だけでは語れなくなっているのも事実なのです。