クスリと正しく付き合う

「お茶」で薬を飲んでも大丈夫なのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 薬を「お茶で飲む」という方も多いのではないでしょうか。薬の多くは「食後」内服です。食後とされているのは、飲み忘れを防ぐ、胃に負担をかけない、吸収をよくするなど、さまざまな理由があります。

 ただ、食後に薬を飲むとなると、水ではなく、必然的に「食後のお茶と一緒に飲む」となるケースが増えるのではないかと思います。

 お茶と薬の飲み合わせは大丈夫なのでしょうか? 「飲み合わせ」という観点からは、「問題ない」といってよいと思います。もちろん臨床試験は水で行われていますので、水とお茶を直接比較しているわけではありませんが、お茶で問題になるような飲み合わせは報告されていません。

 かつては「貧血治療に用いられる鉄剤はお茶と一緒に飲んではダメ」とされていました。これは、お茶に含まれるタンニンという成分(渋み成分)が鉄と結合してキレートと呼ばれる不溶性の結合体を形成することで、鉄剤の吸収が悪くなると考えられていたためです。

 しかし、形成されるキレートは微量であることから、近年は吸収には影響を及ぼさないと考えられるようになっています。お茶と鉄剤の飲み合わせは“都市伝説”だった、というわけです。ただし、お茶にはカフェインが含まれています。詳しくはまたの機会にお話ししますが、カフェインの摂取には注意が必要です。

 漢方薬の中には、お茶を飲むことで、成分の取りすぎになってしまうものもあります。

「川芎茶調散」という薬には、まさにお茶を成分とする「茶葉」が含まれているため、成分がかぶってしまうのです。ただし、とくに心配するほどではありません。

 まとめると「お茶と薬の飲み合わせは心配しなくてもよい」ということになります。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。