高齢者の救急搬送をどうすべきか、これから真剣に議論して準備していかないと大変なことになりそうです。
119番通報は年々増えているのに、2次救急病院など受け入れる医療機関は減る一方。ただでさえ、大変な状況なのに今後は救急搬送される高齢者がさらに増えると予想されているからです。
消防庁のデータ(2011年度)によると、消防署の救急車で搬送された高齢者のうち重症例は15%で、中等症が47%、軽症が38%だったそうです。自宅療養している高齢者を見守っておられる方が、ちょっとした異変に慌てて救急車を呼んだケースがないとはいえない状況です。
一方、消防署に配備されている救急車の出動件数は2014年に598万件を超え、10年前の1.2倍となっています。そして、搬送された人全体の55.5%が65歳となっています。
高齢者の搬送にはどうしても時間がかかるため、通報から到着時間が延びてしまいます。そのせいかどうかは分かりませんが、到着時間は平均2・2分も延びています。いまでは「軽症な高齢者が重篤な患者さんの搬送に支障を来している」との声も上がっているのです。
そこで注目されているのが病院が所有している病院救急車の活用です。本来は入院患者を別の医療機関などに搬送するのが目的の救急車ですが、これを自宅療養している高齢者らの搬送に使おうというわけです。
かかりつけ医師の要請で病院救急車を派遣、救急車には病院所属の救急救命士や看護師が同乗して、医師が指摘する医療機関に搬送する。緊急性の低い患者さんを対象にすることで、より緊急度の高い重篤な患者さんに消防署の救急車を活用してもらうのが目的です。
このことは6月に行われる東京都医師会の会長選でも話題になっています。身近な問題ですので、より多くの人に考えてもらいたいものです。
当事者たちが明かす「医療のウラ側」