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【心臓病のリハビリ】昭和大学藤が丘リハビリテーション病院/循環器内科(神奈川県)

昭和大学藤が丘リハビリテーション病院循環器内科の礒良崇准教授
昭和大学藤が丘リハビリテーション病院循環器内科の礒良崇准教授(提供写真)
実施後3年間で驚くべき成果

 病気治療後の「リハビリテーション」(以下、リハビリ)が必要になる代表疾患といえば、整形外科疾患や脳卒中のイメージが強い。しかし、心疾患の治療後に行う「心臓リハビリ」(以下、心リハ)という分野もある。

 同院は、直線距離にして200メートルほど離れた昭和大藤が丘病院(3次救急)の患者を中心に回復期のリハビリを行う専門病院。そのため、一般のリハビリ病院よりも充実した「心リハ」を実施しているところが特徴のひとつだ。

 同大スポーツ運動科学研究所と兼務し、心リハ認定医でもある循環器内科の礒良崇准教授(顔写真)が言う。

「心リハは、患者さんのADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の回復だけでなく、“2次予防”を目的とするのが他の疾患のリハビリと比べて特徴的な点です。主に運動療法を中心とし、疾病管理や心のケアなども含めた、包括的なプログラムで行います」

 心リハの対象となる適応病名は、「急性心筋梗塞」「狭心症」「慢性心不全」「開心術後(バイパス術後など)」「大血管疾患(大動脈瘤など)」「末梢動脈疾患」だ。治療後、いつ頃から心リハが開始されるのか。リハビリ病院で行う心リハは、保険で5カ月間と決められているという。

「たとえば心筋梗塞では、急性期病院で治療後早ければ2日後くらいからベッドサイドでの心リハが始まり、徐々にレベルを上げていきます。そして発症から2週間くらいで当院に移り、入院もしくは外来での心リハを開始します」

■1回のリハビリは1時間

 運動療法は、エアロバイクやトレッドミルなどを使った有酸素運動が主体。ただし、個々の患者の状態に合わせた運動処方(負荷の設定)が重要になる。設定が悪ければ、逆に不整脈を起こしたり、心不全を悪化させたりしてしまうからだ。

「運動処方は、まず運動中の心肺機能を測定する心肺運動負荷試験(CPX)を行い、その患者さんに合わせた運動強度を処方します。CPXデータから有酸素運動と無酸素運動の境とされる『嫌気性代謝閾値』を決定し、通常はその値より少し弱い運動強度でリハビリを行います」

 このような有酸素運動だけでなく、患者の状態により段階を踏んだ心リハも用意されている。

 低体力者であれば、低負荷レジスタンストレーニングを中心に行い、ADLが著しく低下している場合には、機能訓練室やベッドサイドでリハビリを実施する。

 1回の心リハは、運動前のチェックや体操などを含めて1時間ほど。外来では最大週3回まで。入院中は午前と午後の2回行う。リハビリ中は自分で脈拍を測るなど、自宅で行うウオーキングなどのリハビリの運動強度管理や病気管理についても学ぶという。

「心リハの効果は、当院ではリハビリ前後では最高酸素摂取量が約17%アップすることを確認しています。心筋梗塞など、冠動脈疾患の再発や突然死が減り、死亡率が3年間で約25%減少するとされていますが、当院でも、3年以内の再発や死亡が有意に予防されています」

 また患者の中には、脳血管障害など他の合併症を持つ人もいる。他分野のリハビリとの横の連携が充実していることも当院の強みだという。

■データ
昭和大学藤が丘病院と診療連携。
◆スタッフ数=循環器内科医師3人、心リハ専従理学療法士2人
◆心臓リハビリ新規患者数(2016年)=227人
◆心臓リハビリ延べ件数(同)=約5600件