当事者たちが明かす「医療のウラ側」

研修施設に半年在籍の内規は必要なのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ゴールデンウイークに娘夫婦が遊びに来てくれました。娘は久々の実家で母親にあれこれと甘えていましたが、私は医師である娘婿の相手が正直苦手です。

 彼は勤務医ですので、顔を合わせるたびに仕事の話をします。その多くが人事や治療法など当たり障りのない話題ですが、今回は「新専門医制度」の話になりました。新聞などでご存じの方もおられるでしょうが、これまで各医学会が勝手に認定していた専門医を、新たに設置した第三者機関が審査・認定することで、その価値を高めようというものです。

 地域に密着して、固定の患者さんを持つ私にはあまり切実感はありませんが、若い娘婿からすると専門医であることはその技量の証明であり、患者さん集めのためには重要なことのようです。とくにいまはネット社会ですから、「専門医」という肩書がプロフィルとして書けるか書けないかでは大違いなのだそうです。

 それほど大切な専門医の称号ですが、新たな専門医制度で専門医を認定してもらうには、「研修先の病院に半年間在籍しなければならない」のだそうです。

 現在、娘婿は地方自治体の病院に籍を置きながら、近くの大学病院で専門医資格を得るために研修を受けています。新制度では、いったん地方公務員の身分を捨て大学病院に雇ってもらうか、専攻医として非常勤の医師として働かなければなりません。独身なら、“将来のため”と割り切ることもできるかもしれません。

 しかし、娘婿のように家庭のある身からすれば、「専門医の資格が欲しければ、研修医という名の下に身分や給与保証は考えずに、研修先の病院に身を捧げよ」というのは納得がいかないようです。私も同感です。いまのままでは生活のために、技術習得を泣く泣く諦めるという医師も増えるのではないでしょうか? これでは「新専門医制度は大学に労働力を集めるための手段」と言われても仕方がないでしょう。