当事者たちが明かす「医療のウラ側」

世界的「近視大流行」で日本に2つの学会が誕生

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
首都圏の40代勤務医

 一昨年の科学雑誌「ネイチャー」に興味深い論文が掲載されました。

「近視大流行」というタイトルで東京オリンピックが開催される2020年までに世界中で25億人が近視になる可能性があるというのです。これは世界の全人口の3分の1にあたります。

 とくに香港、台湾などのアジアの一部地域では1950年から60年間に20歳以下の近視が4倍も増加しており、WHO(世界保健機関)も警報レベルと考えているようです。

 むろん、「近視大流行」は日本も例外ではありません。「裸眼視力0・3未満の小学生」はここ30年間で約3倍に増加するなど深刻な状況が続いています。しかも、子供のうちに進行して、大人になるとそれ以上は進まないと考えられた近視ですが、大人になっても進行が止まらない人が増えているのです。

 近視が恐ろしいのは放っておくと進行して、網膜剥離や網膜分離などの合併症を起こして失明の可能性さえ出てくることです。

 こうした事態を日本の眼科医が指をくわえて眺めるわけにはいきません。世界中で近視の研究が本格的に始まっています。日本でも2015年に慶応大学眼科教室などを中心にした「近視研究会」が、翌2016年には東京医科歯科大学眼科教室などが中心になって「日本近視学会」が設立され、「太陽光と近視」や「近視に効く薬剤」などの研究が始められています。

 近視というとメガネやコンタクトレンズ、レーシック手術等で矯正するだけでした。しかし、今後は新たな予防法や治療法の研究が進み、さまざまな知見が発表されるはず。将来メガネやコンタクトが必要となる人はグッと減るかもしれません。