夏のうっとうしさを左右する「3つの発汗」と不感蒸泄

辛い料理はせめて夜に
辛い料理はせめて夜に(C)日刊ゲンダイ

 汗には、「温熱性発汗」「精神性発汗」「味覚性発汗」の3つがある。これからの季節にうっとうしいのが「温熱性」。一般に気温の上昇とともに発汗量が増えるが、「一般に」がミソ。「すみれ皮膚科クリニック」院長・藤田伸弘氏が言う。

「湿度が高いと、気温が高くなくても発汗した汗が乾きにくく厄介です」

 体には、暑さの刺激を受けて汗を出す「温熱性」のほか、無意識に常に一定量の水分を蒸発させる「不感蒸泄」という機能も備わっている。

 温熱性発汗は額と脇の下からスタートするが、不感蒸泄は腕や脚など全身まんべんない。湿度が100%近い梅雨時、30度に満たない気温で額や脇の汗はそれほどでなくても、体全体がジメッとしてスラックスがペタペタ、ワイシャツの袖がしっとりするのは、不感蒸泄の影響か。高湿度で水分が乾きにくいのだ。

「精神性」はストレス下に置かれると出る汗で、手のひらと足の裏に限られる。握手した相手の手がじっとりするのは、相手が緊張しているため。「温熱性」と「精神性」は相互に影響しやすいという。「味覚性」はスパイスなどに反応して頭部や顔面に出る汗だ。

 つまり、不感蒸泄と3つの発汗のいずれかが重なると、汗の量がより増える。毎年のように室内のイベント会場で熱中症が相次ぐのは、行列に並んで温熱性発汗が増えた状態で、混雑による湿度の影響が重なる。汗が乾かず、上昇した体温が下がらないことがストレスになって……。不感蒸泄と2つの発汗が重なっているのだ。

 スパイス料理を楽しむなら、せめて夜にするのが無難だろう。

■汗の量を減らすワザ

 夏の初め汗をよくかいても、7月後半になると少しずつ発汗量は落ち着く。日を追うごとに体が暑さに慣れてくるためだ。この仕組みを暑熱順化という。これを先取りして今のうちから生活に取り入れておけば、夏のピーク時を適度な汗でサラリと乗り切れる。

 では、どうするか。内勤の人なら、ウオーキングなどで体温を上げるようにする。軽く汗ばむ程度で十分だ。

「内勤の方は長年の生活習慣で汗が出にくい。そういう方が会社のレクリエーションなどでバーベキューに参加したりすると、その体質が災いして熱中症になりやすい。適度な汗を出せるようにするための暑熱順化、軽い運動が大切です」(東京都健康長寿医療センター顧問・桑島巌氏)

 営業マンはじめ外勤の人は、日頃の外回りで暑熱順化できているから心配ない。

 どちらにも重要なのが水分摂取だ。目安は、内勤が1時間ごとにコップ半分、外勤が同コップ1杯。汗の多さを嘆く人は、汗腺の働きがいいのもあるが、水分摂取量が過剰の恐れもある。目安と自分の摂取量を比べるといい。

 3つ目は、湿度。それも、衣類内湿度だ。クールビズが定着し、上着なしの人が増え、ワイシャツではなく、ポロシャツの人もいる。簡単なことだが、その裾はズボンに入れず、外に出す。そうすれば、風通しがよくなり、衣類内の温度も湿度も低下。汗が乾いて、体温が下がりやすくなる。結果、汗の量が減る。

 なるほど、沖縄の正装・かりゆしは、裾をズボンに入れず、首回りがスッキリし、袖もゆったり。南国の知恵だ。

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