ドキュメント「国民病」

【続・変形性膝関節症】「ちゃんと歩けるって幸せです」

自転車にも乗れた!
自転車にも乗れた!(提供写真)

 東京・清瀬に住む専業主婦の高橋咲子さん(仮名=65歳)は今、リハビリを兼ねて自宅周辺の1時間散歩を日課にしている。つい数カ月前までは、ホームセンターで買い求めた980円の杖を手放せなかった。

 でも今は、杖は必要ない。ときどき持ち歩くことはあるが、それは万が一の転倒を懸念しているからにすぎない。

「10年ぶりに杖なしの生活です。ちゃんと歩けるとはこんなにうれしくて、幸せなものかと思っています」と高橋さんは笑顔で語る。

 今年1月初め、高橋さんは「東京慈恵会医科大学付属病院」(本院=新橋)で、整形外科医のカリスマといわれる斎藤充准教授の手術を受けた。

「人工膝関節置換術(TKA)」という術法で、術前に患部をCTで撮影し、コンピューター上に構築された3次元画像をもとに手術シミュレーションを行う手術だ。

■手術は怖くない

 20世紀の整形外科分野では最も発展した手術といわれ、このデータを用いて痛んでいる膝の骨部分を切り取り、インプラント(素材はセラミックなど)を設置する。斎藤准教授の解説によると、「虫歯の治療と思ってください。虫歯の痛い部分を削り、曲がった歯を真っすぐにし、そこに金歯をきっちりとかぶせるイメージです。皆さん、関節をブロックで大きく切り出し、大きな人工関節を埋め込むと誤解をしているようです。しかし変形性膝関節症の手術は、決して怖い手術ではありません」。

 病院や医師によってやり方は異なるが、一般的には変形性膝関節症の手術は、片方をまず手術し、少し日を置いてもう片方の手術を行う。

 片方に要する手術時間は約1時間半程度だが、斎藤准教授は両方同時に手術を行う。

 これまで40歳から88歳までの患者を手術しているが、失敗したケースは一度もない。斎藤准教授を「神様」と呼ぶ元患者がいる。