ドキュメント「国民病」

【続・変形性膝関節症】リハビリは夢が持てる痛みでした

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写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ

 今年1月、「人工関節置換術」の手術を行った東京・清瀬市に住む専業主婦の高橋咲子さん(65=仮名)は、ほぼ1カ月に1回、手術を受けた「東京慈恵会医科大学付属病院」(本院=新橋)に足を運ぶ。術後の経過を診てもらうためだ。

 高橋さんは、執刀してくれた斎藤充准教授から、「順調に回復していますから、病院に来るのはもう3カ月に1回ぐらいでいいでしょう。でも歩くとき、もしもの転倒を考えて、もうしばらく杖を携帯してください」
と言われている。

 40代から急増する「変形性膝関節症」は、厚労省の統計(2007年)によると、自覚症状を有する患者数が約1000万人。潜在的患者数は3000万人とも推定されている。

 この病気は、大腿骨と脛骨(すねの骨)の間に位置してクッションのような役割を果たす軟骨がすり減り、変形する病気だ。足を動かすと骨と骨がぶつかり、歩行がストップするほどの激痛が伴う。

 高橋さんは変形性膝関節症に15年も苦しんできた。2階に洗濯物を干しに行くときは、幼児のようなハイハイ姿で、旅行も諦めていた。

 ずっと手術を考えていたが、「怖い」という気持ちが強く、もし手術に失敗したら寝たきりになるのではと恐れた。

「それが斎藤先生とお会いしたとき、笑顔で『私に任せなさい』と言われました。これまでの苦しみが蘇って、つい泣いてしまいました」(高橋さん)

 術後、リハビリは翌日から機械による膝の曲げ伸ばしに始まり、毎日、退院する2月初旬まで続いた。理学療法士の付き添いで、杖をつきながら病院の廊下を何度も往復し、階段の上り下りを繰り返した。

「リハビリでも膝に痛みが走りました。でも昔と同じ痛さでも、これで関節症が治ると夢が持てる痛みでした」(高橋さん)