いまさら聞けない歯科インプラント

治療後はどんなケアが必要か? 定期的な検診が重要

定期的な検診が重要
定期的な検診が重要(C)日刊ゲンダイ

 歯科インプラント(以下インプラント)治療後、最大の敵は「インプラント周囲炎」だ。歯周病菌の感染により、インプラント周囲の粘膜に炎症が起きる病気である。進行すると、インプラントを支える周囲の歯槽骨が溶けてインプラントの脱落を招く。歯科医向けのインプラントセミナーの講師も務める自由診療歯科医で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に治療後のケアについて聞いた。

「インプラント周囲炎は天然歯の歯周炎と同様、最初は歯肉の腫れや出血などで自覚症状が少ないのが特徴です。ただし、インプラントは天然歯より粘膜や歯槽骨の抵抗力が働きにくいので、天然歯に比べて進行が速い。インプラントを長持ちさせるには、日々のセルフケアのほかに歯科医師による定期検診が重要になります」

 日々のセルフケアの基本は正しい歯磨き。毎食後、可能な限り早く歯を磨くのは当然として、就寝前にしっかり歯を磨くことが大切だ。

「温かくて、水分があって、“食べかす”というエサが豊富な口腔内は、細菌にとって絶好のすみかです。細菌は特に唾液の分泌がほとんどない就寝中にどんどん増殖するので、就寝前にも歯を磨いた方がいい。『食後の歯磨き以外したくない』という人は、就寝前・起床後に口を洗口剤で数回ゆすぎましょう。また、食後の歯磨きをする時間がないという人は、歯間ブラシだけでも使いましょう」

 歯磨きは特にインプラントとそれに隣接する歯の周辺をキチンと磨く必要がある。

「インプラントは、インプラント体(人工歯根)、アバットメント(支台)、上部構造(人工歯冠)からできています。上部構造とアバットメントや歯肉の間、上部構造物と隣の天然歯の隙間など、細かい部分まできちんと磨く必要があります。そのためには、歯間ブラシやワンタフトブラシのような隙間やピンポイントの場所を磨く極小歯ブラシ、歯と歯の間のプラークなどを除去する糸のようなフロス、手による歯磨きがうまくできない人は電動ブラシなどの器具を使う必要があります」

 定期検診は3カ月に1度程度で行い、上部構造が外せるタイプなら1年に1回程度外して手入れをする。

「定期検診は、患者さんが気づかないインプラント周囲炎の症状をチェックするのが目的です。インプラントは天然歯と違って、骨との間に歯根膜がないため、骨と直接くっついています。このためかみ合わせがズレたりしてくると、インプラントだけに強い力が加わってしまいます。これもインプラント周囲炎の大きな原因になっていますので、定期検診が必要です」

 インプラントは、治療後のケアがあってこそ。治療すればおしまいではない。