いまさら聞けない歯科インプラント

治療のタイミングは どの歯が抜けたら検討すべきなのか?

噛めなくなったら…
噛めなくなったら…(C)日刊ゲンダイ

 歯科インプラント(以下インプラント)にも治療のタイミングがある。自由診療歯科医で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。

 年齢を重ねるとともに歯周病や虫歯などで歯を失う人が増えてくる。

「1本や2本、歯がなくても問題ない」と思う人もいるだろうが間違いだ。

 そのままにしておくと、口の中で大きな変化が起きる。

「歯が抜けた部分の顎の歯槽骨は歯を支える必要がなくなるので、『廃用萎縮』といってどんどん骨が吸収され、やせていきます。と同時に、抜けた歯の対合歯が歯がなくなったところに出てきて、本来は歯肉に覆われているはずの軟らかい歯根部が表面に現れ、虫歯が発生しやすくなります。また、抜けた歯のスペースに両隣の歯が倒れ込んできて歯並びが悪くなり、噛み合わせが悪化、やはり虫歯や歯周病が進行しやすくなるのです」

 こうなると、やせた顎の歯槽骨の骨量を増やすことから始めなければならず、インプラントを入れるスペースをつくることも必要になる。

「通常のインプラント治療より複雑になり、治療期間も長く、費用もかかります。ですから、天然歯が抜けたら、できるだけ早い段階でそれを補う処置やインプラント治療を検討した方がよいでしょう」

 とはいえ、歯が抜けるたびにインプラント治療をしていたのでは、いくらお金がかかるのか分からない。どの歯が抜けたら、インプラント治療を検討すべきなのか?

「奥歯が抜けたら考えた方がよいでしょう。食事中や就寝中、奥歯に自分の体重程度の負荷がかかるといわれています。それが失われたら、よく噛めずにのみ込むことになるので、胃腸に負担がかかります。また、歯を噛みしめることは脳の血流を良くすることが分かっています。奥歯だけで7割から8割の咬合力を支えているので、他の歯と違ってブリッジでカバーするのは残存歯の影響を考えると長期的に難しい。入れ歯では咬合力が弱いし、長期間使うと顎の歯槽骨がやせて合わなくなる恐れもありますからね」

 では、歯がグラグラしている段階ではどうか? 天然歯を抜いてまでインプラント治療は必要なのか?

「状況にもよりますが、基本的に自分の歯を抜いてまでインプラント治療をする必要はない、というのが私の考えです。インプラントを検討される方の中には、歯の根が割れたり、折れたりして歯根破折保存治療が必要な患者さんも大勢おられます。すでに歯科医師の先生からその状況を告げられて、抜歯してのインプラント治療を勧められていることが多いようです。治療できなかったり、治療しても数年でダメになることが明らかなケースもありますが、まずはきちんとした歯根破折保存治療をすべきです。そのために、時間をかけて丁寧に治療をしてくれる歯科医師の先生を探して治療してもらうことです」