声優の鶴ひろみさんが急死したニュースで怖くなった人もいるだろう。鶴さんはアニメ「それいけ!アンパンマン」のドキンちゃん役などを担当したベテラン。16日夜、東京・中央区の首都高に停車した車内で意識不明の状態で発見され、その後死亡した。57歳だった。
所属事務所は死因を運転中の「大動脈剥離」と発表。一部報道によると、鶴さんは最近も知人をゴルフに誘うほど元気だったという。
医学博士の米山公啓氏によると、正式の病名は「大動脈解離」。心臓から伸びた大動脈は内膜と中膜、外膜の3層構造のチューブ状だが、何らかの理由で内膜が裂けると血液が中膜に入り込み、両方の膜が解離する。さらに血液が流入したことで外膜がコブ状に盛り上がり、大動脈瘤となって破裂する。これが大動脈瘤破裂だ。米山氏が言う。
「心臓から上に伸びた部分の大動脈瘤が破裂し、頚動脈に血流がいかなくなって即死することが多く、大動脈瘤の死因の6割にあたります。このほか腹部大動脈が破裂することもあります。治療を受けない場合、助かる確率は50%しかありません」
大動脈が解離すると、胸や背中に何かが刺さるような激痛が走る。これが前兆で、すぐに救急車を呼ばなければならない。
米山氏によると、亡くなった鶴さんはおそらく大動脈が解離する段階で激痛に襲われ、事故にならないようハザードランプを点灯させて停車。大動脈瘤が破裂して意識不明に陥ったのでないかという。高速道路上で1人だったため救急車を呼べなかったことが不運だったようだ。
原因と予防法は?
「親がこの病気を経験した人は遺伝的に血管がもろいかもしれないので注意が必要です。遺伝はなくても高血圧や高コレステロール、たばこなどで動脈硬化を起こしている人は血管が破れやすくなっている恐れがあります。胸や腹部にこれまで経験したことがない激痛を感じたら、無理をせず救急車を呼ぶこと。予防法は医師の指導を受けて糖尿病や脂質異常症、高血圧、肥満症を治療し、たばこを抑える。食事は塩分を減らして野菜と魚をたくさん食べてください」(米山公啓氏)
50歳を過ぎたら細心の注意が必要だ。