皮膚を科学する

冬に子どもの“ほっぺ”が赤くなり大人はなりにくい理由

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ほっぺが赤い子供に「田舎っぽい」イメージを持つ人もいるが、そんなことはない。「新東京クリニック/美容医療・レーザー治療センター」(千葉県)の瀧川恵美センター長は「元気な印」と言う。

「生まれたばかりの乳児は皮膚が薄く、血流が透けて見えやすいので泣くと体全体が赤く見えます。これが『赤ちゃん』『赤子』などの語源です。その後、成長と共に皮膚も厚くなってきますが、屋外に出てよく遊ぶ年齢になってくると、冬は屋外と室内の温度差が激しいので子供のほっぺが赤くなりやすくなるのです」

 人は寒いと自律神経の働きで、皮膚表面近くの毛細血管を収縮させて体の熱を逃がさないようにする。逆に暑いと血管を拡張させて熱を逃がそうとする。冬は寒い屋外と暖かい室内の温度差によって、その働きが頻繁に繰り返される。ほっぺが赤くなるのは、拡張した血管の血流の色が透けて見えている現象だという。

 では、なぜ大人は赤くなりにくいのか。

「大人の皮膚は、子供ほど薄くなく血流が透けないからです。それに子供と違って自律神経が発達しているので、血管の収縮と拡張を繰り返していても、拡張した血管が戻るから赤くならないのです。昔ほどほっぺの赤い子供が見られなくなったのは、屋外で遊ぶ子供が減ってきているからではないかと思います」

 ただし、子供のほっぺが赤くなったら、俗称「りんご病」と呼ばれる感染症の可能性もある。病原体は「ヒトパルボウイルスB19」で、咳やくしゃみなどの飛沫感染でうつる。症状は、軽い咳や鼻水などの後、ほっぺが赤くなり、1~4日で急速に消える。発症のピークは5~9歳と圧倒的に子供に多いが、大人にも感染するという。

「症状が軽いので見逃されやすいですが、子供に比べて高齢者や大人がかかると筋肉痛などの症状が強く出やすい。家庭内で子供のほっぺが急に赤くなったら注意する必要があるでしょう」

 大人になってほっぺや鼻が赤くなる皮膚病もある。見た目が酒を飲んだような“赤ら顔”になることから「酒(しゅ)さ」という病名が付けられているが、酒が原因で起こるわけではない。

「慢性炎症によって毛細血管が拡張して赤くなるのですが、原因は不明です。日光、精神的ストレス、気候、飲酒、香辛料、運動などが誘因になるとされています。軽症の段階であれば、レーザー治療で赤みを薄くすることができます」

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