高血圧・糖尿病・脂質異常症なら 目のチェックは怠らない

症状はある日突然
症状はある日突然(C)日刊ゲンダイ

 高血圧、糖尿病、脂質異常症などがある人は、目の症状に注意すべき。定期的な検査が必要な人もいる。梶田眼科の梶田雅義院長に聞いた。

「高血圧をはじめ、動脈硬化を引き起こす生活習慣病患者が大半を占める目の疾患が、網膜静脈閉塞症です」

 昨夜までしっかり見えていたのに、朝起きたら、何も見えなくなっていた――。そう訴える患者の血液検査などを行うと、生活習慣病が見つかることもあるという。

 網膜静脈閉塞症は、読んで字のごとく、網膜の静脈が閉塞する疾患。

 目に入った光の情報は水晶体を通り、網膜の上に像を結び、視神経を通って脳に伝えられ、私たちは「見えているものが何か」を認識する。

 網膜内の血管には、動脈と静脈があり、それらは血管の外壁を共有してひとつのさやの中に納まっている。

「動脈硬化が進行すると、網膜内の動脈が硬くなり、静脈を圧迫。すると静脈内の血流が滞り、血栓ができ、閉塞が起こる」

 静脈を流れる血液は網膜から視神経へと出ていくが、閉塞すると、その上流部分の静脈から血液や水分が漏れ出し、眼底出血や網膜浮腫(網膜のむくみ)が起こる。

「血管から漏れ出した血液は毒として働き、周囲の視細胞が死んでいきます。さらに網膜の機能も低下する。結果として、見え方や視野に異常が生じます」

■症状はある日突然…

 閉塞がどこに起こるかによって、網膜静脈閉塞症は2種類に分かれる。

 ひとつは、網膜内の静脈が閉塞する「網膜静脈分枝閉塞症」。もうひとつは、視神経内の静脈が閉塞する「網膜中心静脈閉塞症」。どちらに起こるかは、動脈と静脈の交差の仕方などが関係しており、動脈硬化の進行具合とは一致しない。

 網膜静脈分枝閉塞症では、静脈の閉塞部分によって、自覚症状がほぼない人から、「目のかすみ」「視野が欠ける」「出血したところが黒っぽく見える」「ものが歪んで見える」などの症状で異常に気づく人、または急激な視力低下に襲われる人までさまざま。

 一方、網膜中心静脈閉塞症は、冒頭で挙げた「昨夜までしっかり見えていたのに……」のように、急激に症状が出てくるケースが珍しくない。

「網膜内の静脈の一部が閉塞する網膜静脈分枝閉塞症と違い、網膜中心静脈閉塞症では視神経で閉塞が起こるため、網膜全体に血液や水分が漏れ、全視野にダメージが起こります。圧迫程度によっては、治療を受けても完全失明を免れられないことがあります」

 網膜静脈閉塞症を発症したら、治療は網膜の血流を良くする網膜循環改善薬の投与だ。

 網膜の中央にあり、視力に関連する重要な組織が集まる黄斑の浮腫も起こっていれば、抗VEGF抗体薬の注射も。これは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の働きで新生血管ができ、重度の視力障害が引き起こされるリスクを回避するためだ。

「しかし重要なのは、網膜静脈閉塞症が起こってからの治療ではなく、起こる前の予防的治療。動脈硬化につながる生活習慣病を持っている人は、原因となる生活習慣病のコントロールに努めるとともに、定期的に眼底検査を受け、現在の状態がどうかを確認しておくべきです」

 漫然と生活習慣病の薬をもらっている人、そもそも生活習慣病があるかどうかすら知らない人は、失明の危機がすぐ近くに迫っているかもしれない。

「脳と網膜の血管は似ているため、網膜静脈閉塞症のリスクが高い人は、脳梗塞のリスクも高いことも知っておいてください」

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