急速に増えている「COPD」(慢性閉塞性肺疾患)は、慢性気管支炎や肺気腫の総称。「日本呼吸器学会」の発表によると、日本人の死因(男性)の第7位を占める。
「WHO」(世界保健機関)の統計では、1990年の世界死亡率が6位だったのに対し、30年後の2020年には第3位に上昇すると予告している。恐るべき上昇率だ。
8年前、厚労省が大規模なCOPDの調査を実施したとき、40歳以上の男女8・6%に罹患の疑いが見つかった。
階段の上り下りのときなどに息切れするといった自覚症状のCOPDを、「肺構造破壊病」と命名した医師がいる。埼玉県南越谷にある「南越谷健身会クリニック」の周東寛院長だ。
周東院長は病院の3階に40人を収容する「カラオケ教室」を設け、毎週、自ら音頭を取って外来や入院患者さんにマイクを握らせている。ご本人も率先して歌う。
「COPDの予防や改善の治療法として、腹式呼吸の訓練がいいのです。そのためにもカラオケは、肺の機能を向上させる格好の治療法ですね」
腹式とは簡単に説明すると、空気を鼻で思い切り吸い、ヘソあたりにその空気をため、そして腹にためていた空気を、口からゆっくりと吐き出すことの繰り返し。ヨガや気功、エアロビクス、武道などにも共通している呼吸法だ。
「腹筋と横隔膜の収縮を十分に使った深呼吸法(腹式呼吸)は、内臓に対するマッサージとしても効果があり、内臓の血液循環が良くなり、酸素や栄養分が十分に供給されるようになります。カラオケはこれを継続することによって、COPDの改善、あるいは予防にも結び付く治療のひとつです」
実際、カラオケによる腹式呼吸は肺の活性化以外にも、体にどれだけの効果を生むのか。
腹式発声による演歌を1曲熱唱すると、約20キロカロリー燃焼させる。5曲歌うと、100キロカロリーになる。これは自転車で20~25分走行したのと同じカロリーの消費量だそうだ。
「5曲連続で歌いますと、運動量としては400メートル走と同じ。10曲ですと1キロを走ったことと同じくらいの運動量になります」
大阪市福島区に開設して30年という老舗のカラオケ教室がある。主宰者は主婦の池本佐与子さん(81)だ。
生徒は多いときで60人もいたそうで、男女の割合は1対9。平均年齢は77歳から95歳である。生徒の中には医師もおり、歌のレッスンは、腹を手で押さえ、呼吸を出し入れする発声法(腹式呼吸)から始めるという。
「私の生徒さんで、病気でやめた人は一人もいません。風邪で休むこともそうありませんし、気管支や肺が丈夫になっているのでしょうか。まあ生徒さんは年を感じさせない元気な人ばかりです」
カラオケ療法