昨年から75歳以上のドライバーに対し、免許更新時に認知機能検査が行われるようになった。この1年で検査を受けた210万5477人中、5万7099人が医師の診断が必要な「認知症の恐れ」と判定された。
警察庁によると、「認知症の恐れ」と判定された人のうち、1万6470人が医師の診断を受けた。
そのうち免許取り消しは1836人、停止は56人、処分に向けた手続き中が1515人。1万3063人が免許継続となったが、9563人が原則6カ月後に診断書提出となった。
高齢ドライバーの死傷事故のニュースがしばしば報道される。「ウチの親は大丈夫か」と心配になりつつ、どのタイミングで親へ切りだすべきか、頭を悩ましている人は多いだろう。
脳疾患を専門に診る「眞田クリニック」(東京・池上)の眞田祥一院長によれば、「アルツハイマー型認知症をはじめ、ごく初期では運転にはまだ支障が出てこないケースがほとんど」。
しかし眞田院長が強調するのは、事故を起こすリスクがゼロではないということ。特に、とっさの判断が必要な事態が起こった時が危険だ。
最悪の事態を回避するには、60歳を越えれば、最低でも1年に1回は認知機能をチェックすべき。
「当院が所属する大森医師会では、医師、歯科医師、薬剤師が連携し、認知症患者を早く見つけ出すための『TOP―Q(Tokyo Omori Primary Questionnaires for Dementia)』という簡易チェック法を用いています。親御さんに一度やってみて、おかしいと思ったら、認知症の専門医を受診してはいかがでしょう」
■親子3世代で遊び感覚で
TOP―Qの特徴は自然な会話とそぶりで、準備用具がなくてもいつでもでき、2~3分以内で済む点。
①時事計算・誕生日記憶②山口式キツネ・ハト模倣テストで構成されている。
具体的には次の通り。
①「2年後の東京オリンピックの時は何歳?」「54年前の東京オリンピックの時は?」「誕生日はいつ?」と質問↓いずれか1つ失敗したら×。
②キツネとハト(写真)の見本を示し、同じことをやってもらう↓いずれか1つ失敗は×(1点)、両方失敗は××(2点)。
①と②の×の合計を計算し、1点以下は軽度認知障害または正常。2点以上は認知症が疑われる。
いずれもさりげない会話の流れでやるのがベター。たとえば、「もうすぐ東京オリンピックだね」と話しかけ、「そういえば、その頃何歳になるんだっけ?」というようにだ。
①②の質問をした時の答え方にも注意。
近くにいるだれかに「どうだったっけ? あなた答えてよ」などと言う場合、アルツハイマー型認知症に特有の“取り繕いの症状”が疑われる。
TOP―Qによる早期発見は、運転による死傷事故を起こさないようにするのに加え、症状の進行を遅らせることにもつながる。
「20~25年前はアルツハイマー型認知症がわかると“3年くらいは今と同じような生活を自宅でできるでしょう”と患者さんやご家族に告げていました。しかし今は早期に発見し、薬を上手に使うことで、患者さんによっては10~20年以上、軽度の症状のまま、日常生活を送ることも可能。認知症の前段階ともいわれる軽度認知障害で発見されればよりその可能性が高まります」
TOP―Qなら、親のプライドを傷つけないだろう。親子3世代で遊び感覚でやってもいいかもしれない。