子作り治療 最前線

第三者からの卵子提供 日本人夫婦は年間700~800組が利用

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 子宮自体には問題がないのに、何らかの原因で妊娠可能な卵子が得られないことがある。中でも、晩婚化などにより、子供を望んだ時には既に年齢的に卵子の数や質が低下(卵子の老化)し、妊娠に至らない女性が増えている。

 そのような場合に有効なのは、第三者女性(エッグドナー)から卵子の提供を受け、夫の精子と体外受精を行い、その受精卵(胚)を妻の子宮に移植する「卵子提供」である。しかし、卵子提供は国内の医療機関では基本的に認められていない。希望者は民間業者を介して、海外の医療機関で受けているのが現状だ。

■選択肢としての情報周知が課題

 日本人向け卵子提供・代理出産の業界最大手のエージェンシー「メディブリッジ」(東京・品川)のスタッフが言う。

「米国をはじめ海外では、卵子が原因と考えられる不妊状態になった場合、医師が卵子提供を勧めます」

 業界全体で推計すると、年間700~800組の日本人夫婦が海外の医療機関で卵子提供を受けているとみられている。同社は創業12年目になるが、これまでに卵子提供を受ける1000組以上のカップルをサポートし、うち約95%が子供を授かっているという。

 同社が提携する医療施設はハワイとマレーシア。渡航回数は、現地医師による診察と受精卵を移植するときの2回。費用は、400万~700万円台という。

 卵子を提供してもらう日本人エッグドナーは、同社が運営する業界最大(20~30歳の300人以上が登録)のドナーバンクの中から選ぶことになる。ドナーのプロフィルには、写真、年齢、身長、体重、学歴、職歴、病歴、趣味などが提示されている。

「卵子提供のデメリットは、母親の遺伝子が子供に引き継がれないことと、コストが高いことです。しかし、卵子提供を希望する人の多くは、すでに高度な生殖医療を何年にもわたって受けており、治療費の総額が1000万円を超えているという方も珍しくはありません。それを考えると、『卵子提供』が不妊治療の選択肢のひとつとして、もっと周知される必要があると思っています」

 卵子提供を受ける夫婦のほとんどが、「着床前診断」(日本では認められていない受精卵の染色体検査)をオプションで行うため、妊娠後に染色体異常が判明し、中絶するケースはないという。

 次回は「代理出産」を取り上げる。

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