10月以降は要注意 中高年が目の老化に注意すべき5つの理由

夕方の死亡事故は昼間の4倍
夕方の死亡事故は昼間の4倍(C)日刊ゲンダイ

「オレはまだまだ若い。老眼や白内障などの目の老化は気にしない」――。人生100年時代を意識してか、若作りの50、60代が増えている。しかし、目の老化は強がらずに、素直に受け入れて対策を取った方がいい。交通事故を起こしたり、被害に遭ったりする可能性が高くなるからだ。18時台が暗くなるこれからの季節は要注意だ。「清澤眼科医院」(東京・南砂)の清澤源弘院長に聞いた。

 日が暮れるのが早くなった。東京ではいま、午後5時半くらいが日没で、30分ほどで急激に暗くなる。

 警視庁が2013~17年に発生した1万9754件の死亡事故を分析したところ、日没前後2時間に車と歩行者が衝突する死亡事故がもっとも多く、昼間の4倍になるという。10、11、12月は特に死亡事故が目立つので、目の老化が進む40歳以上は注意したい。15年の年齢別免許保有者10万人当たりの交通事故件数は30~39歳の3・29人が一番低く、40~49歳は3・35人、50~59歳は3・94人で、65歳以上は5・80人と急激に増える。原因の多くは「安全不確認」「発見の遅れ」だ。

「そもそも車を運転すると健康な人でも視力が大きく低下し、速度が上がるにつれて動体視力も落ち、視野も狭くなり、モノが見えにくくなります」

 北里大学医療衛生学部視覚機能療法科の川守田拓志准教授らの研究では、通常1・0の視力を持つ人でも時速60キロで運転していると視力が0・4まで低下するという。軽い白内障があれば通常0・9の視力が0・1まで低下する。

 年を取ると、この傾向に拍車がかかる。老眼(老視)に限らず中高年の視機能は特有の劣化を示すことを自覚する必要がある。

■狭まる視野

「年齢を重ねるにつれ視野が狭くなります。人が見える視野範囲を<周辺視野>といい、成人は200度、高齢者は160度といわれています。人がハッキリ認識できている範囲を<中心視>、人がよく見えている視野範囲は<有効視野>で、それぞれ1~2度、4~20度といわれています。これらの視野範囲は年と共に狭くなっていきます。特に緑内障では視力低下がなくても意外に視野狭窄が進行しています」

■暗順応が遅れる

「老視だと暗所での視力はさらに出にくくなります。老視は近くがぼやけて見えにくくなるだけと思う人がいますが、他の視機能も低下します。例えば暗順応の遅れです。明るいところから急に暗いところに入った場合、最初は周囲が見えにくく感じますが、徐々に慣れて見えるようになります。これが暗順応です。逆に暗いところから明るいところへ出た場合の現象が明順応です。中高年は特に暗順応が低下します」

 一般的に暗順応は明順応よりも時間がかかるため、夕方に高齢者ドライバーは特に見えにくくなる。

 トンネルの出入りはもちろん、明るい幹線道路から暗い生活道路へ入るときの歩行者の見落としにつながる。

■距離を把握する深視力も衰える

「深視力のある人は両目を使ってバランス良く距離を把握しますが、老視があると、それができにくくなります。目を寄せる働きが低下して、左右どちらか一方の目を中心に見る傾向が出て、見るモノが平面になり、距離感をつかみにくくなるのです」

■動体視力が落ちていく

「裸眼視力が落ちている人は一般的な眼鏡やコンタクトレンズで止まっている対象物を見る静止視力を補っていますが、動いているモノを見る動体視力は十分には補えません。ある研究では56歳を過ぎると動体視力は急激に衰えていきます。心当たりのある人で車を運転する場合は減速を心がけることです」

■眼精疲労で「かすむ」「ダブって見える」 

 日没前後は日中の疲れが出やすい時間帯でもあり、眼精疲労も起きやすくなる。

「眼精疲労にはいくつかの種類があって、老視の場合は対象物へ焦点を合わせる距離が長くなってしまうにもかかわらず、資料を見たり、書類を作成したりするなどして無理に近くを見ようとするために目に負担がかかり調節性眼精疲労が起きるのです。目がかすんだり、ダブって見えたりする症状が出る。遠方焦点に十分に合っていない眼鏡の装用などの状態で車を運転すると危険なのは言うまでもありません」

 中高年は日没前後の歩行にも注意が必要だ。茨城県で歩行中に交通事故に遭った人数を明るさ別、年齢別に比較した交通事故総合分析センターのデータでは、18時台の「明るい6、7月」と「薄暮の3、9月」「暗い1、11、12月」にわけて調べたところ、75歳以上では薄暮の18時台の事故が最も多かった。

 長生きできるようになったからといって目の能力が高まったわけではない。高齢者は運転する場合はもちろん、歩行者であっても定期的に眼科で検診してもらうことだ。

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