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足の病気の専門医が解説 「正しい靴選び」3つのポイント

宇佐美則夫院長
宇佐美則夫院長(C)日刊ゲンダイ
宇佐見則夫院長 うさみ整形外科・足と靴のクリニック(東京・調布市)

 普段、何げなく履いている靴だが、ケガから「足を守る」という大事な役割を果たしている。それをデザイン優先で選んでいたとしたら本末転倒。靴が合っていないと足の痛みの原因になるだけでなく、体重による負荷がうまく吸収・分散されず、膝痛や腰痛の悪化の原因にもなる。健康長寿のためには、正しい靴選びの知識を身につけて、足の健康管理が重要になるのだ。

 しかし、日本では足に対する靴の影響は、一般的にあまり知られていない。

 足の病気の専門医である宇佐見則夫院長(顔写真)が言う。

「それは西洋諸国に比べて、日本は靴の文化の歴史が浅いからです。本来であれば、小学生の頃には正しい靴の選び方や履き方を教えておかなければいけないのです。また、年を取るにつれて足の靱帯や筋肉が弱まり、体重も変化するので、少しずつ足の形が変わることを知っておかなければいけません」

 正しい靴選びの基本的なポイントは次の3つになる。

●かかとが隙間なくフィットしていて、ある程度の強度があるもの。「靴はかかとに合わせて履くもの」だという。

●靴ヒモ(もしくはマジックテープ)をしっかり締め、足の甲の部分で動かないように留められるもの。足と靴が密着して一体化していれば、靴は軽く感じる。ゆるいと靴が重りになり、障害の原因になる。

●履いた靴先にゆとりがあり、足指がグーパーできるもの。購入する際には必ず試し履きをして、実際に歩いて確認することが大切という。

 これらの条件が悪いと足の痛みの原因になる。靴が関係する主な足の病気には、母趾が靴で圧迫されて変形する「外反母趾」、足の横アーチが低くなって指の付け根が痛い「開張足」、足の内側の縦アーチが低くなってくるぶしが痛い「扁平足」などがある。

「足はアーチ構造になっていて、母趾とかかとを結ぶ内側縦アーチ、小趾とかかとを結ぶ外側縦アーチ、母趾から小趾を結ぶ横アーチがあります。この立体的な3つのアーチによって地面からの衝撃を吸収・分散して全身の重みを支えています。アーチは加齢でも崩れますが、靴が合っていないとさらに助長して、歩行時の痛みや骨の変形につながるのです」

 足の痛みだけでなく、靴が合っていないとスポーツ障害などのケガも起こりやすくなるという。しかし、足の痛みの原因が何なのか、靴の影響を診断するのは足の病気の専門医でないとなかなか難しい。専門医を探すなら「日本足の外科学会」などのホームページに掲載されている名簿を参考にするといいという。

 治療では、オーダーメードで靴の中敷きを作製してもらうことで痛みが改善する場合もある。外反母趾、靱帯損傷、変形性足関節症、変形性膝関節症、後脛骨筋腱機能不全などの診断がつけば保険適用で作製できる。

 また、糖尿病足やリウマチなどで足の骨の変形が強い場合には、義肢装具士に発注して治療靴を作製する方法もある。

「あきらかな原因がなくて、歩行時の痛みが1カ月以上も続くようなら専門医に診てもらった方がいいでしょう」

 足は健康の土台。適切な靴を履くことは、足の病気の予防にも治療にもなるという。

▽1979年慶応大学医学部卒。稲田登戸病院、至誠会第二病院、慶応大学整形外科講師、東京女子医大膠原病・痛風・リウマチセンター講師を経て、12年開業。〈所属学会〉日本整形外科学会、日本靴医学会理事長、日本足の外科学会理事など。

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