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安静時の「異常なし」は要注意 心電図検査の“盲点”を知る

検査時に発症しなければ、チェックができない
検査時に発症しなければ、チェックができない(C)日刊ゲンダイ

 ドアノブをつかもうとしたら、静電気が……。体に電気が通るように、人間の体は電気が重要な役割を担っています。脳からの指令も神経を通って電気が伝え、心臓の動きは電気に支配されているのです。

 心臓の動きを電気的に記録する検査が心電図で、皆さんも健康診断でおなじみでしょう。上半身裸であおむけに寝て、両手首と両足首、胸の合計6カ所に電極をつけて調べます。電極を取りつけても体に電気を流すのではなく、心臓の拍動によって生じる電流を記録するものです。

 装着時にヒヤッとしたのも束の間、検査はすぐに終わり、波形が表示されます。波形に異常があると、心臓のどこが問題なのか、考えられる病気は何かといったことが分かり、治療効果の判定や薬の副作用のチェックにも効果的です。

 心臓をターゲットにする検査だけに、異常があると心配でしょう。しかし、異常がないときこそ要注意といえます。

 健康診断で行われるような一般的な心電図(安静時12誘導心電図)は、“その瞬間”を記録する検査。動悸や胸痛、息苦しさを時々感じるような人でも、検査時に発症しなければ、チェックできません。問診で患者さんからの訴えがないと、その症状を引き起こしている異常が見過ごされる恐れがあるのです。

「午前中は動悸がひどくて、胸も痛むんです」

 高血圧と糖尿病で受診されている60代の男性はそうおっしゃいました。ところが、安静時12誘導心電図は案の定、正常。そこで欠かせないのが、ホルター心電図検査。手のひらサイズの携帯型心電計で、病院で胸に複数の電極をつけたまま帰宅し、24時間の心電図をチェックするものです。男性にもホルター心電計を装着してもらいました。

 翌日、取り外して心電図を解析すると、翌朝は50分近くにわたって脈拍が上昇する頻脈が続いていました。放置すると危険なので、総合病院の循環器科に紹介。アブレーションというカテーテル治療で、その不整脈はよくなり、今は元気に生活されています。中高年の方の心電図検査は、異常なしほど要注意といっていいでしょう。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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