病み患いのモトを断つ

連休で寝つきが悪いなら 時差ボケ解消に朝活のススメ

朝日を浴びると体内時計がリセットされる
朝日を浴びると体内時計がリセットされる(C)日刊ゲンダイ

 10連休に思いっ切りハッスルしたのだろう。疲れを引きずっている人がいる。海外旅行に出かければ、時差ボケもあるかもしれない。自宅でゆっくりという人も、たまの連休に寝坊三昧を決め込めば、寝つきが悪くなって早起きがおっくうだろう。これも、時差ボケといえる。旅行組も自宅組もつらい時差ボケをどう解消するか。聖路加国際病院内科名誉医長で、「西崎クリニック」院長の西崎統氏に聞いた。

「物理的な1日は24時間ですが、人間の体内時計は25時間周期。補正しないと、毎日1時間ずつズレていきます。海外旅行にいけば、生活そのもののサイクルがガラッと変わるので、体内時計が必ずズレる。実は、そのズレを補正する仕組みは、朝にあるのです。寝る前の習慣をあれこれ工夫しても、朝の習慣を改善しない限り、時差ボケをはじめとする睡眠障害は良くなりません」

 漫画「ドラえもん」に登場するのび太くんはどこでも眠る“スイマー”で、夜決まった時間になると3秒で眠りに就く。人間の睡眠には、疲れたときに脳を休める睡眠と、体内時計のリズムで眠くなる睡眠がある。時差ボケにつながるのは後者だ。そこには、睡眠ホルモンといわれるメラトニンが深く関わっていて、そのスイッチが朝にあるという。

「朝起きて朝日を浴びると、25時間周期の体内時計がリセットされ、1時間のズレが補正されるほか、メラトニンの分泌が抑制されます。その一方で、抗ストレスホルモンのコルチゾールの分泌が高まって、目が覚める。朝日を浴びてから、15~16時間後にメラトニンが再び分泌され始め、体に夜を告げ、その分泌が十分高まると眠くなるのです。だから、朝が大切なのです」

 ママに叩き起こされたのび太くんは、目をこすりながら朝食を取り、小学校へ。眠くても決まった時刻に起きて、外に出る。

 このごく当たり前の朝の行動が、時差ボケ解消のカギなのだ。

「朝起きても、部屋の中でゆっくりと朝食を取っていると、朝日を浴びません。それで、昼頃外出しても、体内時計がリセットされず、メラトニンの分泌リズムも崩れるので、夜眠れなくなる。家にいても、ベランダの植物に水をやったり、朝食を取るときは窓際でカーテンをあけたりして、10時までに朝日を浴びるのが一番です」

■ベストな食事は焼き魚と納豆、味噌汁の和定食

 メラトニンは、睡眠障害を治す薬のひとつにもなっている。メラトニンの分泌を良くする生活を心掛ける“のび太ライフ”は、理にかなっているだろう。その働きをさらに強めるのが、朝食だ。

「メラトニンの合成にはトリプトファンとビタミンB6が欠かせません。それらを含む食材を朝食で取っていると、夜間のメラトニン分泌がスムーズになり、時差ボケ解消に結びつくのです」

 トリプトファンは、乳製品に多く含まれるが、大豆や鶏肉、ナッツ、ゴマ、白米などにもよく含まれる。牛乳でゴロゴロする人は朝、味噌汁や納豆、豆腐などを取ればいい。ビタミンB6は、サケやサンマ、イワシなどの魚のほか、牛のレバーに多い。つまり、時差ボケ解消にベストな朝食は、焼き魚と納豆、味噌汁でご飯を食べるような和定食というわけだ。

「時差ボケは、短時間作用型の睡眠薬を使えば、すぐに良くなります。しかし、GWやお盆、正月などの連休のたびに睡眠のリズムが狂う人は、根本的に生活を見直す必要があります。そのためには朝の行動が重要。二度寝するにしても、一度は朝日を浴びることです」

 のび太くんばりの“スイマー”になりたければ、とにかく“朝活”だ。

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