歯の疑問 ずばり解決!

「フッ素」には歯を強くする効果がどこまであるのか

正しい歯磨きと併用
正しい歯磨きと併用

 私はフッ素の効果に関して百パーセントの信用はしていません。国内におけるフッ素に関する調査とその結果についてのエビデンス(科学的根拠)は玉石混交だと言わざるを得ません。論文の中には科学的でないものもありフッ素の効果を疑問視する専門家もいるのです。

 それでもデータ上は、「歯にフッ素を塗ると耐酸性の強い状態になる」とされていますので、“理論上は”歯が強くなる可能性は高いのではないかなと思っています。

 6歳前後で生えてくる永久歯を「幼若永久歯」といい、その段階でフッ素を塗ると効果があると考えられています。しかし、正しい歯の磨き方も一緒に指導しなくては不十分です。

 当たり前ですが、フッ素を塗ったから虫歯にならないわけではありません。正しい歯磨きとフッ素を併用して初めて、虫歯予防の効果があると考えなくてはいけません。

 患者さんの話ですが、その人のご両親は長年、歯磨き粉にフッ素配合と書いてあるものを選んで子供時代の患者さんに買い与え、さらに毎月フッ素を塗りに歯医者さんへ通わせていました。でも、残念なことに、その方は子供の頃から虫歯だらけなのです。大人になった今は、「毎食後に歯を磨くことを習慣にしているにもかかわらず虫歯になってしまう」という悩みを持っています。

 それはなぜかというと、残念ながら圧倒的に歯磨きが下手なのです。ご両親のフッ素への信頼感から、「塗っていさえすれば大丈夫」という生活環境で子供の頃から暮らしてきたこともよくありませんでした。大人になる前にほとんどが虫歯になっていたため口の中は虫歯菌だらけで、少しでも弱っている歯があれば磨き残しを温床に繁殖して虫歯になってしまうのでした。

 極端に悪いパターンを紹介しましたが、幼い頃から毎月フッ素を塗りに歯科医院を訪れることで、定期検診が生活の中で習慣化してくれること自体は大変良いことだと思います。

 (構成=小澤美佳)

北沢伊

北沢伊

1977年7月8日、長野県生まれ。斉藤歯科医院院長。2003年に日本大学松戸歯学部を卒業。同年から同院に勤務し、13年から院長に就任した。若手歯科医師に向けたセミナーの講師を務め後進の育成にも取り組んでいる。日本口腔インプラント学会専門医。千葉県歯科医師会所属。

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