病気を近づけない体のメンテナンス

【胃】もたれや痛みなどの不調はプチ断食では解消しない

胸焼けでは体の左側を下にする
胸焼けでは体の左側を下にする

 年を取るほど脂っぽい物や甘い物をあまり食べられなくなる。それは加齢に伴って胃の働きが低下するからだ。

 無理してたくさん食べると「胃もたれ」、少し食べただけでお腹がいっぱいになる「早期飽満感」を引き起こす。「鳥居内科クリニック」(東京都世田谷区)の鳥居明院長が言う。

「胃の機能が低下すると、胃に入った食べ物を消化・排出するのに時間がかかるため、胃もたれや早期飽満感が起こるのです。胃炎で胃の機能が低下している場合でも、同じように起こります。胃の排出にかかる時間はカロリー量に比例するといわれ、カロリーが高いほど遅くなります」

 胃痛(心窩部痛)の原因では、「胃炎」「胃潰瘍」「胃がん」などが考えられ、強い香辛料や酸っぱい果物を食べると胃酸の分泌が促進され、弱った胃粘膜が刺激されるので痛みが強くなるという。

 胸やけ(前胸部痛)やのどの痛みを繰り返す場合には、胃酸が食道へ逆流する「逆流性食道炎(胃食道逆流症)」の可能性がある。胃酸の分泌が長くなる高カロリー食、夜遅い食事、肥満などが要因になる。

 しかし、胃に炎症や潰瘍などの異常がないのに、胃もたれや胃痛の症状を引き起こす病気がある。「機能性ディスペプシア(FD)」だ。

「FDは、昔は神経性胃炎などと呼ばれていたもので、2013年に正式な病名として認められました。発症の一番の原因はストレスです。胃の胃酸分泌や蠕動運動などの働きは、すべて自律神経によってコントロールされています。ストレスによって交感神経が優位な状態になると、胃の働きは低下します。それで胃の排出がうまくいかず、胃もたれを起こしたり、知覚が敏感になったりするため、胃痛を起こしたりするのです」

 いずれにしても胃の不調があったら、とりあえず市販薬を服用して様子を見るといい。薬の種類では、重曹の配合されてる「消化薬」や胃酸の分泌を抑える「H2ブロッカー」。市販薬で改善しなければ、胃がんの恐れもあるので早めに受診しよう。医療機関ではH2ブロッカーよりもさらに強力な「プロトンポンプ阻害薬」や、FDに対しては「アコチアミド」という消化管の運動機能を改善する薬などが処方されるという。

 もちろん胃が不調な時は、消化のいい食べ物を取るよう心掛ける。たとえば、おかゆ、うどん、トースト、豆腐、卵料理など。ラーメンやソバは消化が悪い。繊維の多い野菜なども避けた方がいいという。

 では、胃の不調を防ぐ、胃にやさしい生活のポイントとはどのようなことなのか。胃の負担を減らすことを考えたら、週末の“プチ断食”などは有効なのか。

「暴飲暴食は当然ですが、不規則な食事はよくありません。胃に負担をかけない食生活は、1日3食、規則正しく取り、腹八分目が基本です。プチ断食のような食事の取り方は、不規則になるのでお勧めできません。胃酸は食べ物が胃に入っていない時でも分泌されているので、極端な空腹が続くと胃酸が中和されず、胃粘膜を傷つけてしまいます。ですから胃炎や胃潰瘍の胃痛は、空腹時に起こるのです」

 ただでさえ胃の機能が低下している中高年は、脂っぽい物、甘い物、刺激の強い物は食べ過ぎない。特に塩分の取り過ぎは、胃酸から胃壁を守っている胃粘液の防御機能が低下するので要注意という。脂肪分と塩分を抑えた病院食がおいしくないのはそのためだ。

■胸やけする人は体の左側を下にして横になる

 お酒は食前酒を少し飲むのは胃粘膜を刺激して食欲が増すのでいいが、大量に飲んだり、アルコール度数が高いと胃粘膜を荒らしてしまう。

 お茶やコーヒーに含まれる苦味成分のタンニンは胃の動きを良くして、カフェインは胃酸の分泌を促すので、食事の後に飲むのは理にかなっている。

「胃の消化を良くするには、副交感神経を優位にすることが大切です。夕食の時は、リラックスできる音楽を流して、暖色の明かりの下で食事をするといいでしょう。レストランの環境を思い浮かべてください」

 食べた胃の内容物は、消化するまで平均3~4時間は胃にとどまっているので、食後は体をあおむけにしない方がいい。

 横になりたければ胃の入り口と排出口の位置の関係で、胸やけ(胃酸が逆流)する人は体の左側を下に、胃もたれする人は体の右側を下にするといいという。

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