新型コロナウイルス「超過死亡」から見た本当の死亡数

コロナ患者の治療にあたるイタリア・ミラノの医療関係者たち
コロナ患者の治療にあたるイタリア・ミラノの医療関係者たち(C)ロイター=共同

 死亡後のPCR検査で新型コロナウイルスと判定されたケースが複数報道されているが、実際はもっと多いのではないか。

 この疑問には、インフルエンザ関連死の推計で発達してきた「超過死亡」の手法が有効だ。欧米では新型コロナにも使われるはずだが、日本では話題にもなっていない。

 インフルエンザ患者のなかには、細菌性の肺炎など、別の病気を合併して亡くなる人も大勢いる。だが正確な人数を把握することが難しい。

 そこで週ごとの死亡数の変動をもとに、インフルエンザによって、呼吸器系の死亡数がどれだけ増えたかを推計し、増えた分を「超過死亡」として計上しようという考え方が生まれた。

 インフルエンザの影響がまったくないと仮定した場合の平均死亡数をベースラインとする。ただし年によって変動があるため、ある程度の幅(95%信頼区間)をもたせ、その上限を閾値とする。そして実際の死亡数が閾値を超えていれば、その分を超過死亡数とし、インフルエンザ関連死として計上するという。

 超過死亡の状況は、国立感染症研究所の「インフルエンザ関連死亡迅速把握システム」のページで公開されている。毎週(現時点では4月初旬まで)のインフルエンザと肺炎の死亡数、ベースライン、閾値がグラフで提供されている。もし新型コロナ関連死が大量に発生していれば、グラフに例年とは違う、明らかな異常が見られるはずだ。

■東京都では100人以上も見逃している可能性が

 今シーズンはどうか。1月からインフルエンザ患者が減少し、死亡数は閾値の範囲内に収まっていた。しかし東京都では不思議な動きを示している。第8週(2月16日の週)から死亡数が突然増え始め、第13週(3月22日の週)まで連続6週間にわたって、超過死亡が観測されたのだ。

 データが数字で提供されていないため、グラフから目測で見積もるしかないが、120~130人の超過死亡があったようだ。この時期には、インフルエンザはほとんど終息していたので、超過死亡の多くは、実は新型コロナ関連だったのではないか。この間の東京都の新型コロナの死者は7人と公表されている。差し引き100人以上のコロナ関連死が、インフルエンザ関連死として処理された可能性がある。

 すでに2月中旬から東京を中心に感染が広まっていたのだろう。だがPCR検査は制限されていたし、当人も、死亡診断書を書いた医師たちも、まさかコロナとは思いもしなかったのだろう。

 まだ全国のデータが出揃っていないし、4月上旬以降のデータも出てきていないので、断定的なことは言えないが、コロナで亡くなった人は公表数よりかなり多そうだ。ただ数倍に増えることは考えにくい。もしそうなら、現場の医療関係者たちがとっくに気付いているはずだ。

 コロナで直接・間接に亡くなった人は、おそらくすでに1000人を超えているだろう。しかしそれでも、欧米と比べれば、かなり少なく収まっている。

(長浜バイオ大学医療情報学・永田宏教授)

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