東京都内の病院に緊急入院した個室部屋で、渡辺一誠さん(40=コンサルタント会社社長)は、担当医師から、「平熱に戻るまで大体、7~8日ぐらいかかりますよ」と告げられた。
夕方になると、40度に近い高熱に襲われた。解熱剤を何度服用しても、熱は少しも下がってくれない。
高熱が出てから8日目頃になり、医師が予告していたように、ようやく高熱がピークを迎えた。
ピークといっても、完全に解熱したわけではない。体温が日々、徐々に下がっていく感じで、37・6度まで下がった。
「平熱の36・5度に比べたら、37・6度はまだ高い。でも、体の感覚では凄く低くなったなと、ホッとしました」
食欲も出てきた。だが、下痢症状はまだ続いており、長時間の空咳も治まっていない。
月が替わって4月1日、コロナの発症から11日目、入院6日目を迎えた。
早朝や夕方に体温を測ると37・6度である。不安の高熱からは脱出した。でも、「再度高熱に戻り、容体急変」という恐怖感は捨てきれなかった。
血中酸素濃度(※血液中の酸素満タンを100%にすると、正常値は96~99%。これ以下の数値なら体調不全を疑われ、90%以下は呼吸不全の状態)は1%下がっていたが、咳き込む肺のダメージが原因のようである。
4月3日、コロナ発症から13日目(入院8日目)。今朝の体温も37・1度である。平熱近くになり、苦しかった咳も、少し落ち着いている。
「一昨日に血液の検査がありました。看護師さんの説明によると、95%の確率で回復者に入っていると言われました。でも残り5%の患者さんを思うとそう喜べません」
4月5日、新型コロナに感染してから2週間。高熱の症状がほぼ消えた。
順調に回復している渦中に、友人から一本のメールが入る。
「私が感染をさせたかもしれない友人が、40度近い高熱でうなされ始めている」
自分だけなら我慢をすればいいが、友人の苦しみには胸が痛む。
ベッドに伏せながら39・7度の高熱と対峙しているとき、正直、頭に死もよぎった。
病室を巡回してきた年配の医師が、独り言のようにこうつぶやいていた言葉が脳裏に焼き付いている。
「もし私がコロナに感染したら、間違いなく亡くなる数%側に入るでしょう。でも医師として患者に向き合い続ける限り、死を覚悟しなければなりません」 (つづく)