病の克服は患者に聞け

新型コロナ<6>十分注意していたのにあっさり感染してしまった

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「『国民に告ぐ。外出を禁止する、補償はこれから考える』――国は、こうした強い姿勢を見せるべきではないでしょうか」

 新型コロナに感染し、都内の病院で、生死をさまよった渡辺一誠さん(40=コンサルタント会社社長)がこう言う。  入院後丸々1週間、39・8度の高熱と、併せて止めようもない空咳と格闘してきた。

 白昼、病室を忙しく往来する看護師の足音も途絶えがちになる深夜の個室部屋。高熱にうなされ、震えが全身を襲う。解熱剤を飲んでも、熱が下がらない。このまま死ぬのではないかという恐怖心が、明け方まで続いた。

 入院8日すぎに高熱から解放された。早朝からテレビに映し出されるコロナの番組をうつろな目で追いながら、思考回路も平常に戻ってきた。

 渡辺さんは性格が潔癖で、新型コロナの感染が盛んに報道されてから、エレベーターのボタンも肘で押していた。

 移動はハイヤーか徒歩、または自転車である。電車はめったに利用しない。乗っても手すりなどに直接手で触れないように細心の注意を払ってきた。それでも感染したのである。

「コロナウイルスは人類の敵です。感染の阻止を教える教科書はないし、治療薬さえもまだありません。感染を抑え込むには、外出を禁止する以外にないと思っています」

 自分以外に、両親、兄弟、親類、友人、恋人が感染したら、どれほどの不安を抱くか。

「パチンコ店や飲食店で遊んでいる場合ではありません」

 10日間ほど病室で、コロナと格闘の末に生き地獄から生還した渡辺さんの発言は重い。

 言葉を続けて渡辺さんは、「本来、人間の目的は生きることにあります」と言い、こうも付け加える。

「私は普段から、交通事故に遭う可能性、電車など人身事故に巻き込まれる可能性、ホームで人から押される可能性、テロリストに遭遇する可能性、通り魔に襲われる可能性、ペットが牙を向いてくる可能性、地震や建物倒壊で犠牲になる可能性……、これら日常で経験する危険性を見聞していますから、想像がつきます。だから急場の対応や、危険から事前に避難することも可能です」

 でも、こうした各種の危機を予想できる中で、危険性にまったく対処できない恐怖が一点ある。人類を襲い、人から人に感染させる未知の「ウイルス」だ。

「暗闇からいきなり銃弾を撃ち込んでくるようなウイルスは、避けることができません。絶対に甘く見てはいけないと思います。私だって感染はしたくないと思い、行動には十分に注意していたのに、あっさりと感染してしまったのです」 (つづく)

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