和式生活が健康を作る

着物を着る40~60代は痩せている 帯が姿勢を正してくれる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前回紹介した下駄と同じように伝統衣装である着物も日本人の健康を支えてきたことがわかっている。

 京都大学医学部付属病院(呼吸器内科)の医師で、「日本きもの学会」会長を務める高橋裕子氏は、奈良女子大学(保健管理センター教授、共生自然科学大学院教授)で教壇に立っていた時代に学生の協力を得て「着物」に関するアンケート調査を行っている。

 多くの女子学生に意見を求めた着物調査は、高橋氏が研究を続けている「きもの健康学」を構築する上で、重要なステップになった。

「きものは健康に悪いと思う? 思わない?」という項目のアンケートに、A群が日常的に着物を着用していない女子学生245人。B群は着物を日常的に着用している240人に分けて回答を求めたのである。

 結果が面白い。A群の回答は、「きものは健康によい」がゼロ。「どちらかと言うと悪い」が半数を占めた。

 着物着用のB群は逆で、「きものは健康にとてもよい」が75%を占め、「とても悪い」「悪い」がゼロだったのである。

 着物と健康について、全く正反対の回答が出たが、大きな差の理由として、腹を締めつける「帯」の存在があった。

 帯が苦しい。食事ができない。気分が悪くなる。帯をほどくとすっきりするなどである。

 高橋氏は「帯」も研究課題のひとつにした。詳細は割愛するが、圧シートセンサーを用いた「被服圧」という科学的な実験を用いている。

 その結果、帯が苦しいのは自分で着ないからで、自分でつければ心地よいものであり、腹巻きや西洋のコルセットと同じで、腹を締める帯は正しい姿勢を保ち、猫背になることを防ぐことにもつながる可能性があるという。

 さらに「きものを着用している人は健康なのか? 不健康なのか?」について、統計学手法を用いて、こんな検証をしている。

「日本和装師会」(京都市中京区=市田ひろみ会長)の協力を得て、着物常用者240人(平均年齢50代)に大要、以下のようなアンケート(無記名直接配布回収法)を実施した。

 質問項目は、身長、体重などのほかに、以下の薬を内服していますかとし、「血圧の薬」「インスリンや血糖値を下げる薬」「コレステロールを下げる薬」「貧血の薬」「睡眠薬」の回答を求めた。

 ほかに、「朝食を食べているか」「1回30分以上の運動を週3回行っているか」などの回答も求めたのである。

■薬も少ない

 高橋氏は、このアンケートを精査し、直近の「国民健康・栄養調査」によるBMI(身長と体重から算出される指標=肥満や低体重の判定)の数値を比較した。

 女性の理想的体格は、「BMI25」以下とされているが、比較対照の結果はどうであったか。

 着物常用者は、70代未満でもいずれもBMIが低く、とくに40代から60代は明らかに低かった。女性の宿敵である肥満が少なかったのである。また着物常用者は、生活習慣病に連なる薬類の服用も少ない。併せて健康にも気を配り、運動をしている人が多いという結果が出た。

 むろん、この結果を全国の着物着用者全員に当てはめられるとは考えられないが、着物が健康的であることを示すひとつの実証になるのではないか。

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