コロナ第2波に打ち勝つ最新知識

消毒液による「うがい」のやり過ぎは逆に感染リスクをアップ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 うがい薬の品薄が続いている。今月4日、吉村洋文・大阪府知事が会見を開いて「新型コロナウイルスの感染者が、ポビドンヨード入りのうがい薬を使用したところ、唾液からウイルスが検出される人が減った」と発表。重症化を防ぐ効果も期待できるとの見解も示された。ワイドショーで生中継されていたこともあり、ドラッグストアやネット通販ではアッという間にポビドンヨード入りのイソジンうがい薬が売り切れたのだ。

 しかし、会見の直後から「実施された研究は科学的根拠が弱い」「唾液中のウイルス量が減ったことを感染や重症化の予防に結びつけるのは飛躍しすぎ」など、専門家からは疑問視する声が相次いだ。それでも、いまだにポビドンヨード入りのうがい薬が売り切れているのは、新型コロナ対策として使っている人が多いのだろう。

 だが、ポビドンヨードなどのうがい薬を使用したうがいのやり過ぎはむしろ逆効果になりかねないという。アメリカ国立衛生研究所(NIH)でウイルス学・ワクチン学の研究に携わり、著書に「感染を恐れない暮らし方」がある本間真二郎医師(七合診療所所長)は言う。

「ポビドンヨード入りのうがい薬は粘膜にも使える唯一の消毒液で、のどなど口腔内の粘膜に付着した感染前のウイルスや細菌を死滅させ、その時点で口腔内や唾液に存在しているウイルスの量を少なくする効果があります。しかし、完全に除去することはできませんし、感染した=細胞内に入り込んでしまったウイルスに対してはまったく効果がありません。つまり、口腔内の表面に付着したウイルス量を一時的に減らせはしても、感染防止効果はほとんどないといえますし、重症化の予防効果もないと思われます。むしろ、口腔内の常在菌にダメージを与えてしまって、逆効果になる可能性があります」

 われわれの口腔内には700種類近い細菌が生息していて、その数は全体で1000億個以上といわれている。そのほとんどが病原性のない細菌で、ウイルスの感染予防や免疫の調節などで重要な役割を果たしている。ミュータンス菌などの“悪玉菌”も存在するが、口腔内をケアして善玉菌を優位にしておけば、口腔内の常在菌は、pHを下げたり、抗菌活性のある物質や過酸化水素を出して、ウイルスや病原菌の定着を防いでくれるのだ。

「ポビドンヨード入りのうがい薬を使って頻繁にうがいをしていると、こうした口腔内の常在菌まで減らしてしまううえ、粘膜にもダメージを与えて傷つけてしまいます。そうなれば、逆にウイルスに感染しやすくなってしまうのです。ポビドンヨードで1日に1、2回程度うがいをするくらいなら大きな問題はないでしょうが、感染を予防するとなれば多用することになります。口腔内のウイルスを減らす効果はあっても、マイナスのほうがはるかに大きいのです」(本間氏)

 実際、予防医学と公衆衛生に関する研究を取り上げる米国の医学誌では、05年に京都大学の川村孝教授(当時)が行った科学的な研究結果として、「ポビドンヨードを使ったうがいは、水によるうがいに比べて風邪にかかりやすくする」と報告されている。やはり、消毒液を使ったうがいは逆効果になりかねないのだ。

「うがい薬の中には、ポビドンヨードのほかにアズレンスルホン酸ナトリウムを使ったものもありますが、こちらは炎症を抑えるタイプで、抗菌、抗ウイルス効果はありません。殺菌効果がある市販のマウスウオッシュを多用することも、口腔内の常在菌のダメージを考えるとおすすめできません」(本間氏)

 ウイルスを減らすためにうがいをして、逆に感染リスクを上げてしまっては本末転倒。うがいするなら水だけで十分なのだ。

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