コロナ第2波に打ち勝つ最新知識

感染封じ込め成功国からの帰国<4>アルバイトのような隔離生活

徹底した対策が奏功した
徹底した対策が奏功した(C)ロイター

 猛暑日が続く8月中旬、台湾から帰国した古川亮一さん(仮名・社会福祉団体職員=40)は、成田のAホテルに“隔離”された。

 連泊、2週間の滞在である。新型コロナウイルス対策の「特別対応」で、部屋の清掃はない。滞在4日目、部屋は汚れ、ベッドのシーツにも汗が染み込んだ。

 フロントに電話をかけ、「シーツの交換をお願いできますか?」と申し出ると、部屋の前に、ビニールに入ったシーツが届けられた。

 バスタオルや歯ブラシ、歯磨きも、使用済みは常備されているビニール袋に入れ、口を縛って部屋の外に置く。回収されて、代わりに新品が置かれる。

 ゴミもそうである。ただし分別作業があり、燃えるゴミとペットボトルは一緒のビニール袋。缶や瓶は、別の袋に入れて部屋の外に出す。

 1週間も浴槽を使用すると、汚れてくる。

「フロントに連絡して『洗剤を購入して洗いたいのですがいいですか』と聞くと、『結構ですが、掃除する布製品はホテルで常備しているものをお使いください』と言われました。客でなくアルバイトみたいでした」

 古川さんは台湾の大学に留学し、卒業後そのまま台湾で仕事に就いた。友人関係も良好で仕事にも不満がない。ただ、独身で外食が多い古川さんは、こってりとした台湾料理には不満があった。あっさりとした日本食が食べたい。数年ぶりに帰国した日本での食事は納豆、豆腐、漬物、焼き魚と決めていた。

「ところが、ホテルの隔離で希望する食事は無理でした。ホテル側から何店かデリバリーサービスの店を紹介されました。でも、注文料理はピザとか焼き肉、天丼、かつ丼の類いが主流です」

 仕方なく近所のコンビニで野菜サラダやおにぎりなどを購入し、部屋で食べる生活が続いた。

 そんな古川さんに、なぜ台湾はコロナ封じ込めに成功したのかを聞いた。

「SARSが流行したとき、台湾では346人が感染し、37人が死亡しました。その記憶から、動きだしが早かったことが成功の理由でしょう」

 台湾に初めてコロナ情報が寄せられたのは、昨年の12月30日。2日後の1月1日には日本の厚労省に当たる「衛生福利部」が緊急会議を開き、飛行場に検査機関を設立。外国から台湾に訪ねてくる全員の検査を始めた。

「新型コロナをSARSの再来と捉えて、メディアもマスク着用、手洗い、外出禁止の呼びかけを徹底しました」

 こうした対策に異論を唱える政府や医療関係者の少数意見を排除し、感染予防策を全土で強固に実施したという。

「政府、国民、病院が一体となってコロナに立ち向かったことも成功の要因だと思います。台湾では仕事帰りにお酒を飲む習慣がありません。それも幸いでした」

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