ビートルズの食生活から学ぶ健康

ポールは素材にこだわる 世界ツアーには9人の料理人が同行

リンダがポールの「食」を変えた
リンダがポールの「食」を変えた(1980 Gunther/MPTV)

 2017年の来日公演でパワフルなステージを披露してくれたポール・マッカートニーですが、ツアーの際にどのような食生活をしていたのか、前回ご紹介した2002年3月のワールドツアーの記録を収めた「ポール・マッカートニー イーチ・ワン・ビリービング」(プロデュース・センター出版局刊)が参考になります。

 当時のワールドツアーには9人の料理人で構成されるチームが同行しており、コンサートのある日には250食以上の有機ベジタリアン食が準備されたそうです。

 ランチ6種類、ディナー8種類のコースが用意され、その内容は、イタリア料理、メキシコ料理、日本料理などさまざまで、ブラウンソースをかけたエッグ&チップス(目玉焼きとフライドポテトの組み合わせ)は、すぐになくなってしまったとか。

 ある日のメニューとして、トマトソースのベイクド・チーズ・ラビオリ(パスタの生地の上にチーズをのせて焼いたもの)とロースト・ベジタブル(野菜と香辛料などをあえてオーブンで焼いたもの)付きのポレンタ(トウモロコシを粉状にしてお粥のように煮たもの。もちもち食感)、野菜を添えたうどん、チリ味のペンネ、ドライトマトのパスタ、アスパラガス、ガーリック風味のマッシュポテトなどが登場していました。とてもおいしそうなメニューばかりが並んでいますが、どれも肉類、魚類を一切使用していないのにお気づきでしょうか。

 ポールは語ります。

■「野菜とフルーツは僕を爽快な気分にしてくれる」

「ベジタリアン料理のことを指して、医者は大抵、ヘルシーな食事だって言うしね。僕はただ素材のいい物を食べているだけさ。野菜とフルーツも大好きだよ。別に健康のためにそうしているというよりも、こうした食べ物は僕を爽快な気分にしてくれるんだ。そうでないものは食べない。肉も魚も、顔のついているものは何もかも食べない。だから、それも関係しているのかも……」

 そう自らの「食」について語り、さらにこう続けます。

「当時(ビートルズブームの時代)は、年に360日……少なくとも350日は働いていたんだ。それ以上の休みはもらえなかった。僕らは仕事が好きだったし、有名になりたくて仕方なかったし、どんなコンサートでもオファーがあれば受けたし、マネジャーは僕らを働かせ続けた。でも、当時はそれがとても良い運動にもなっていたんだと思うよ」

 つまり、ポールの健康維持の秘密は、「食べ物の素材」にこだわり、「適度な運動」をし、「仕事を楽しむストレスの少ない生活」にあったようです。

 それにしても、一体どのような食べ物を毎日食べているのか、マッカートニー家の食卓の内容は、1998年に亡くなった妻リンダ・マッカートニーが書いた料理本が参考になりますが、それは改めて紹介します。

 ポールは、リンダの遺志を継ぎ、娘のステラ、メアリーとともに現在も「食」と「地球環境」と「動物愛護」を結びつけた「ミートフリー・マンデー」(Meat Free Monday=月曜日には肉食をやめてみよう、という意)を続け、コンサートでもその内容を記したパンフレットを配布しています。

 ポールのこうした活動は彼の生み出す音楽同様、押し付けがましいものでなく、「興味が持てたらどうぞ」というスタンスなので、好感が持てます。

松生恒夫

松生恒夫

昭和30(1955)年、東京都出身。松生クリニック院長、医学博士。東京慈恵会医科大学卒。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。地中海式食生活、漢方療法、音楽療法などを診療に取り入れ、治療効果を上げている。近刊「ビートルズの食卓」(グスコー出版)のほか「『腸寿』で老いを防ぐ」(平凡社)、「寿命をのばしたかったら『便秘』を改善しなさい!」(海竜社)など著書多数。

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