ビートルズの食生活から学ぶ健康

健康の重大要素「ポールの食」にメタボを遠ざけるヒントが

1966年6月に初来日、日本武道館で公演するビートルズ
1966年6月に初来日、日本武道館で公演するビートルズ(C)共同通信社

 78歳の現在もなお、「老化知らず」のパワフルなステージパフォーマンスを続けているポール・マッカートニーについて、これまで少しずつ紹介してきました。

 私が直接目にした、ポールのライブステージ上の動きを少しご紹介すると、ベースギターを弾きながら歌い終えるとベースギターを横に置き、短い階段を上って少し高めに設定されたピアノの前に座り、休む間もなく次の曲をスタートする、といった感じです。スマートな外見、そして軽やかな体の動きは「老化」を感じさせず、ビートルズが20代初めだった頃の時代に私たちを連れていってくれるような気分にさせてくれました。

 代表的な老化現象のひとつに「メタボリック症候群」があります。いわゆる「メタボ」の代表的疾患としては、内臓肥満、高脂血症(脂質代謝異常症)、高血圧、高血糖などがあります。さらに、運動機能に関する骨格筋、骨、軟骨、関節なども老化に伴いさまざまな変化を生じさせ、歩行機能の低下や日常の生活動作の制限や痛みが表れてきます。

 また、骨格筋も自覚の有無にかかわらず萎縮などが認められ、筋力低下につながっていきますし、骨密度の低下は骨粗しょう症の発症要因になるといわれています。

 ポールの日常生活に「老化」を遅らせてくれる答えがある。そう考えるなら、健康的な生活の重大要素である「食生活」に注目すべきです。

 つまり、ベジタリアンであるポールの食生活こそが、糖尿病、高血圧、動脈硬化、メタボリック症候群などの「老化現象」の予防に大きな役割を果たしている、と私は考えています。

■ビートルズのメロディーには副交感神経を優位にする効果が

 さて、ビートルズが公式に発表したアルバムは13枚とされていますが、私にとっては全曲どれもすばらしい作品ばかりです。

 実は、かつて私が「ビートルズでおなかスッキリ」(法研、2006年刊。現在は品切れ中)というCD付き単行本を上梓した際、その中で、「ビートルズの作り出すメロディーには、気分をリラックスさせて副交感神経を優位にする効果が認められる」ことをご紹介しました。

 CD制作にあたり、モニターの方にピアノ、フルート、チェロ、バイオリンによるビートルズナンバーの演奏(10曲)を聴いていただき、試聴前後の心拍数を測って比較してみたところ、「ディス・ボーイ」「グッド・ナイト」の2曲で心拍数が低下しました。つまり副交感神経が優位に変化し、やすらぎ感を得たことの証しです。この結果から、毎朝、目覚めたときには拙著CDの「ディス・ボーイ」を、眠りに就く前には「グッド・ナイト」を聴かれることをおすすめしていました。

 また1960年代に人気を博したホリーリッジ・ストリングスという米国の弦楽オーケストラが演奏する歌のないビートルズメロディーがこれもまたすばらしく、疲れた気持ちを癒やしてくれます。

 とくに「オール・マイ・ラビング」や「プリーズ・プリーズ・ミー」などは、コロナ禍でうっとうしい気分を吹き払ってくれる名盤です。ユーチューブでも聴けます。朝の目覚めが良くなれば朝食をしっかりと取ることにもつながります。3食きちんと取ることは食物繊維の摂取量を増やすことになり、腸に良い効果を与え、結果として腸寿=長寿の道へとつながっていくのです。

松生恒夫

松生恒夫

昭和30(1955)年、東京都出身。松生クリニック院長、医学博士。東京慈恵会医科大学卒。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。地中海式食生活、漢方療法、音楽療法などを診療に取り入れ、治療効果を上げている。近刊「ビートルズの食卓」(グスコー出版)のほか「『腸寿』で老いを防ぐ」(平凡社)、「寿命をのばしたかったら『便秘』を改善しなさい!」(海竜社)など著書多数。

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