新型コロナ禍の「暖房と換気」の基本を改めて知っておく

ストーブを併用するのも手
ストーブを併用するのも手

 新型コロナウイルス感染症が全国各地で広がりをみせ、いよいよその脅威が家庭に迫ってきた。東京都では15日、火曜日としてはこれまでで最も多い460人の新規感染者を出した。このうち感染経路がわかっているのは、「家庭内」が最も多く62人で、以下「職場内」が31人、「施設内」が28人、「会食」が15人だった。改めて家庭内での感染予防について「弘邦医院」(東京・葛西)の林雅之院長に話を聞いた。

「家庭内の感染者が増えているのは、誰から感染したのかを追跡しやすいということに過ぎない。実際は別の感染経路の方が多いと思います。しかし、家庭内での感染者が増えていて、そのリスクは高まっているのは事実なので注意が必要です」

 それは新規感染者の世代の広がりを見ればわかる。秋口までは新規感染者の多くは中高年だった。

 ところが、15日の東京では460人の新規感染者の年代別人数をみると、10歳未満6人、10代27人、20代125人、30代91人、40~50代126人、60代以上85人と全世代にわたっている。しかも感染者の多くは無症状というから、どの家庭でも家庭内感染のリスクはこれまでよりも高くなっている。

「冬は気温が下がり、湿度が低くなります。飛沫に含まれるウイルスは飛沫の水分が抜けるため小さく、軽くなり空気中を漂いやすくなるうえ、活性化して感染力を維持したまま長く生きることになります。そのため、外出先で手洗い、マスク、3密回避につとめているだけでは感染を防ぐのは難しい。マスクの隙間からウイルスを吸い込み、感染する可能性はこれまで以上に高くなるからです」

 だからといって、高齢者と接するとき以外、家庭内でマスクをするのは現実的ではない。そのぶん、これからは家庭内でも食事前やトイレ後などに手洗いをする、大声で話さない、食事は大皿から各自が取るのでなく最初から小皿に取り分けておく、水洗トイレを流すときは蓋をする、外出中に使用したマフラーやコートはリビングや寝室に置かない、などにより注意することが大切になる。

■エアコンを使うなら加湿器も併用する

「もうひとつこれからの季節で気をつけたいのは暖房です。多くの家庭ではエアコンを使っていると思いますが、エアコンでは外気と入れ替わらないために、感染者がいた場合は、感染者から吐き出された飛沫が室内にとどまりぐるぐる回り、同じ部屋にいた人を感染させてしまいます。しかも、エアコンだと空気が乾燥したままになります。なので、エアコンで暖をとる家では必ず加湿器を使って室内の湿度は40%以上にしましょう。ウイルスはそれ以下だと活性化することがわかっています」

 室温は18度以上、できたら24度以上にする。ウイルスの活性化を抑えられてヒトの免疫機能も高まるうえ、血管が緩むため循環器疾患の発症リスクも抑えられる。

「換気はエアコンと対角線上の窓や扉を開けることで空気の流れをつくること。窓や扉がない場合は換気扇を回したり、HEPAフィルター付きかUV機能のある空気清浄機を換気の補助に使うといいでしょう」

 適当な空気清浄機が手に入らないのならエアコン以外の昔ながらの暖房器具を使うのも手だ。

「石油ストーブやガスストーブ、電気ストーブなどの室内燃焼型の暖房器具を併用するのもいいかもしれません。空気中に漂うウイルスを殺してくれますし、室温を早く上げてくれます。ただし新型コロナ対策でアルコール消毒液を使う家庭は引火による火災に気をつける必要がありますし、やけどにも注意しなければなりません。石油ストーブを使う場合は、一酸化炭素中毒になりやすいので換気はより一層注意しなければなりません」

 石油ストーブを使わなくても今年の冬は換気が重要だが空気は見えないために換気は個々の感覚に頼らざるを得ず、管理は曖昧になりがちだ。

「私は『空気質測定器』を使うのがよいと思います。空気のよどみ、温度、湿度をチェックしてくれて価格は数千円から数万円で手に入ります。注意したいのは二酸化炭素(CO2)濃度です。800ppm以下を目指しましょう。これは日本の厚労省はもちろん世界保健機関(WHO)や欧州の空調学会などが推奨している新型コロナ対策基準です。CO2濃度を調べるのはそれが感染を引き起こすわけではもちろんありません。濃度が高いとそれだけ空気がよどんでいることを意味し、その空間に感染者がいた場合は、ウイルスを含んだマイクロ飛沫を浴びてクラスター(感染者集団)が発生しやすくなるからです」

 自分ができる範囲で感染予防をする。いまはそのことが大切だ。

関連記事