マスク着用で急増中!「口呼吸」は健康を害する危険あり

口呼吸で子供の歯並びに悪影響を与えるケースも
口呼吸で子供の歯並びに悪影響を与えるケースも

 新型コロナ禍における生活様式の変化で、大人も子供もマスクの着用がすっかり当たり前になった。2月下旬からワクチン接種が始まったとしても、感染そのものを防げるわけではないため、まだまだマスクは外せない。そんな状況下で懸念されているのが「口呼吸」の弊害だ。

 マスクを着用していると、どうしても息苦しさを感じる。そのため、ふと気づくと自然と口を開けて「口呼吸」になっている人は多いだろう。

 人間は本来、「鼻呼吸」するのが自然な状態だとされている。鼻にはたくさんの機能が備わっていて、鼻から息を吸うと、鼻毛や鼻の粘膜が空気中のほこり、ウイルス、微生物などを取り除く。また、空気が出入りする肺を保護するため、鼻腔から咽頭、気管を通る過程で外気の温度や湿度を適度に調節する働きも担っている。鼻には、空気清浄機、エアコン、加湿器の機能が搭載されているのだ。

 口呼吸していると、そうした機能が十分に働かなくなるため、ウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなり、感染症にかかりやすくなったり、免疫力の低下につながってしまう。さらに、口呼吸が口腔内の環境を悪化させ、さまざまな弊害を招くリスクがあるという。「小林歯科医院」の小林友貴氏が言う。

「口呼吸をずっと続けていると、口腔内が乾燥して唾液が減少してしまいます。唾液にはいくつもの重要な働きがあり、①口腔内の細菌や食べ物のカスを洗い流す洗浄作用、②口腔内に侵入した細菌の活動を抑え込む抗菌作用、③口の中のpHバランスを調節する緩衝作用、④歯のエナメル質が溶ける脱灰の進行を防いで虫歯リスクを軽減させる再石灰化作用、⑤口腔内の粘膜、歯、喉を覆って保護する作用、⑥舌や喉の動きをなめらかにして食事や会話をスムーズにさせる潤滑作用、⑦食べ物を分解して消化を助ける作用、⑧傷ついた組織を修復する作用などが挙げられます。口呼吸による唾液の減少は、こうした働きを低下させてしまうため、感染症にかかりやすくなったり、虫歯や歯周病を招くリスクをアップさせるのです」

 実際、加齢によって唾液の量が少なくなっている患者は、飲食物やたばこのヤニなどで歯が着色しやすく、歯周病の原因になる歯石やプラーク(細菌の塊)の量も多いという。歯周病は、がん、心臓病、糖尿病、認知症といった病気にかかりやすくなることがわかっている。口呼吸が深刻な病気につながる危険もあるのだ。

■子供の歯並びや姿勢に悪影響を与えるリスクも

 さらに、口呼吸が子供の成長に悪影響を与える可能性もある。

「口呼吸では口を開けた状態が続きます。すると、口を閉じているときは口腔内の上側に位置している舌が、口を開けたままだと下顎側に下がることになり、舌と口の周りを支える筋肉のバランスが崩れ、成長期の子供の顎の成長や歯並び、そして姿勢にも悪影響を与えてしまいます。また、口を閉じる際に使う筋肉が衰え、徐々に締まりのない顔つきになってしまう可能性もあります」(小林氏)

 マスク着用の息苦しさから、自然と口を開けて口呼吸になっている子供が増えているという指摘もある。注意が必要だ。

 マスクは飛沫感染を防ぐだけでなく、鼻、口、喉を潤して健康を守る効果がある。しかし、マスク着用によって口呼吸がクセになり慢性化してしまうと、逆に健康を害するリスクがある。マスクの下でも鼻呼吸を意識したい。

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