進化する糖尿病治療法

コロナに感染しても重症化させないために知っておきたいこと

血糖コントロールを良好に保つことが大事
血糖コントロールを良好に保つことが大事

 新型コロナウイルス感染者数が爆発的に増え、もはやだれが発症してもおかしくない状況です。糖尿病など重症化リスクのある人がPCR検査で陽性となった場合、入院の対象となりますが、今はやむを得ず自宅療養になることも珍しくありません。

 糖尿病患者さんがこのコロナ禍を、重症リスクを少しでも減らして過ごせるために知っておきたいことを、改めて取り上げたいと思います。

 何をおいても実施していただきたいのは、血糖コントロールを良好に保つことです。

 再三この連載で紹介している通り、糖尿病があるからといってコロナに感染しやすいわけではありません。しかし、重症化しやすい。世界的にみても、コロナで重い呼吸器症状を呈して入院した患者では、糖尿病を持っている人がそうでない人より多いと報告されています。重症化だけでなく、死亡リスクも高くなります。

■血糖コントロールが良好なら生存率は下がらない

 一方で、血糖コントロールが良好な糖尿病患者のグループと血糖コントロールが悪いグループを比較した研究では、血糖コントロールが良好なグループでは生存率が下がりませんでした。

 血糖コントロールを良好にするには、まずは適切な薬の服用です。糖尿病の薬は選択肢が多く、現在服用している薬が最も自分に適しているものとは限りません。

 糖尿病専門医に診てもらっている場合は薬が本当に効いているか、診察の際にチェックが行われているでしょうが、糖尿病患者は非常に多く、対して専門医がそれに見合った数ではないことを考えると、専門外の医師が処方している場合もあると思われます。

 また、漫然と同じ薬を飲み続けている人もいるでしょう。糖尿病の薬は低血糖の問題もあり、年齢によっては見直しが必要な場合もあります。コロナを機に、ぜひ確認をしていただきたいです。 生活スタイルを規則正しいものにすることも忘れずに。在宅勤務の人は、意識して体を動かすようにしてください。

 糖尿病の患者さんには、「以前は病院に行っていた。でも血糖コントロールが悪くて主治医に怒られるのが嫌で行かなくなった」という人も少なからずいると思います。何も症状がないので、そのまま受診せずにいるという人もいるはず。今すぐ病院を受診し、血糖値やHbA1cを調べてください。コロナが重症化しやすい心配だけでなく、そもそもの糖尿病で取り返しのつかない状況に陥っている可能性があります。

 糖尿病は、自覚症状がなかなか出ない病気です。体がだるい、喉が渇く、目がかすむ、トイレが近い、傷が治りにくい、性機能の問題がある……といった症状が出てきたときは、かなり進行していることが考えられます。

 腎機能低下による人工透析、神経の障害による壊疽、糖尿病性網膜症による失明の危機がすぐそこに迫っているのかもしれないのです。

 繰り返しになりますが、糖尿病があれば徹底した血糖コントロールを。糖尿病だと過去に指摘された人で、今は病院に通っていない人は、できるだけ早い段階で再受診を。それが、糖尿病とコロナの双方から身を守ることになります。HbA1cが8%を超えていると危険です。また糖尿病は血管にダメージを与えます。高血圧・脂質異常症を合併していると一段と合併症のリスクが上昇します。

 そして覚えておいて欲しいのが、風邪のような症状があった場合です。コロナか風邪かは、PCR検査でないとはっきり区別がつきません。風邪をひいたらすぐにPCR検査を、というのは非現実的ですが、風邪のような症状があり、発熱がある場合は、かかりつけ医に速やかに相談してください。特に、味覚障害や嗅覚障害があった場合は、様子を見るのではなく医師に相談すべきです。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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