家族3人がコロナに感染…自宅療養を漢方薬で乗り切った

家庭内感染も増えている
家庭内感染も増えている(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染者の爆発的な増加に伴い、PCR検査で陽性と判明されても自宅療養となる人が珍しくない。漢方歴26年の薬剤師、久保田佳代さん(漢方薬局「氣生薬局」代表)が、実際にあったコロナ感染者(PCR検査陽性)のケースを話してくれた。

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「自宅療養者の増加が報道されてから、PCR検査陽性患者さんから漢方薬の電話での問い合わせがすごく増えています。無症状や軽症では、解熱剤以外、なんらかの薬が処方されるわけではありません。急変して亡くなるケースの報道が相次いでいるため、『万が一の時のために』とみなさんおっしゃいます」

 東京23区内に住む46歳の女性Aさんから電話があったのは1月11日。20歳の娘と15歳の息子と単身赴任の夫の4人家族で、離れて暮らす夫以外の家族3人の陽性が判明したという。

「Aさんは以前から漢方薬に関心があり、万が一コロナに感染した場合は漢方薬で、と考えていたそうです。そこで詳しい症状を聞き、それに合うと考えられる漢方薬を処方しました」

 Aさんは熱が37.3度で、倦怠感と腰や肩の痛みがあった。そこで藿香正気散(かっこうしょうきさん)、玉屏風散(ぎょくへいふうさん)を処方し、さらに板藍根(ばんらんこん)とビタミンCを飲んでもらうことに。娘は頭痛、鼻詰まりがあり、コロナと判明する前に高熱が出たが、現在は平熱。藿香正気散、川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)の各処方と板藍根、ビタミンCを。

 息子は、咽頭痛、頭痛、鼻詰まり、39度の熱。藿香正気散と玉屏風散、板藍根、ビタミンCを出した。なお、漢方薬を氣生薬局で受け取り、Aさん宅のポストへ投函する役目は、感染していないAさんの友人が担った。

「板藍根は抗ウイルスに使われることで中国で非常に有名な生薬で、これは基本として服用してもらい、それ以外では同じ発熱でも熱の上がり方が異なるなど違いがあったので、三者三様で処方しました。さらにAさんには毎日、電話で症状を報告してもらい、必要があれば薬を替えました」

 Aさんは1日で熱が35度台まで下がったが、腰痛と肩甲骨から首筋までの強烈な筋肉痛のような痛みに襲われた。久保田さんは引き続き3種類の漢方薬、ビタミンCを服用することと、湿布を痛みのある部分に貼るよう指示。1月13日には痛みは、ほぼ取れた。

■軽症で重症化リスクがない人に限る

 娘はサークル仲間とZoomでやりとりできるほど元気。熱も36度台で、3日間は板藍根、藿香正気散、川芎茶調散、ビタミンCを。ところが4日目(同15日)に軽い頭痛と鼻炎が少々出てきたため、板藍根と辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)に替えた。5日目(同16日)には嗅覚が鈍った。2種類の漢方薬を継続して飲み、嗅覚異常は10日間が過ぎる頃には元に戻った。

 息子は37~38度の熱、咽頭痛、激しい頭痛が続いた。服用した漢方薬は板藍根、藿香正気散、玉屏風散。3日目(同14日)の夜には板藍根、川芎茶調散、銀翹解毒散(ぎんぎょうげどくさん)に替えた。同15日には熱が36・7度に下がったので、玉屏風散と銀翹解毒散に。翌16日からは平熱だが薄い鼻水と、鼻炎による鼻のかみすぎで中耳炎のような症状が出てたので、板藍根、玉屏風散、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)にした。

「3人とも念のため10日間、漢方薬を服用してもらいました。共通点は、発熱があったとはいえ、食欲もあり、元気だったこと。Aさんからは『大好きなお酒が飲みたい。ジョギングもできそう』と冗談が出ました」

 無症状や軽症で、重症化リスクがない人に限るものの、もしもの時は漢方薬が強い味方になってくれるかもしれない。未承認の漢方薬を処方して摘発された漢方薬局があるが、久保田さんの漢方薬の処方については、すべて一般用医薬品として日本で承認されている。適切に使えば、漢方薬の副作用の心配もない。

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