水で絞ったタオルで拭くのはNG…よくあるコロナ対策の間違い

家庭内感染を防ぐには徹底して微生物を殺すことが大切
家庭内感染を防ぐには徹底して微生物を殺すことが大切(C)PIXTA

 新型コロナウイルスの感染経路の一つが、接触感染。ドアノブ、電気のスイッチ、手すり、電話の受話器、スマートフォン、机、椅子などにウイルスがいる場合、それを触った手で鼻や口、目などを触ると感染リスクが高まる。だから石鹸を使った手洗いが予防策として重要になるわけだが、家庭内感染防止のために併せて実施したいのが、掃除だ。

「感染防止清掃は、きれいにしてウイルスなどの微生物を殺すことが大切です」

 こう言うのは、病院などの感染防止の清掃指導を行う「アムテック」代表の矢部要氏(医療環境管理士)。よくあるのが、水で絞ったタオルでテーブルなどを拭くこと。ウイルスは死滅していないので、タオルによってウイルスが広がってしまう。そのタオルで別の場所を拭けば、ますます広がる。

 矢部氏は病院清掃の講習会をする時に、よく簡単なテストを出すと言う。それは、次のようなもの。

【問題】同じように汚れたまな板を、4つの洗い方で洗いました。

A.水洗い
B.中性洗剤
C.次亜塩素酸ナトリウム
D.中性洗剤で洗浄後次亜塩素酸ナトリウムで消毒

 その後の微生物の数を数えました。次のような結果になりました。

(1)1200万(2)7万(3)600(4)50

 どの洗い方が、どの結果を答えなさい。

「『水洗い』が一番微生物の数が多く、『中性洗剤で洗浄後次亜塩素酸ナトリウムで消毒』が一番少ないというのはみなさんわかるので、Aが(1)の1200万、Dが(4)の50。これはだいたい当たります。問題はBとC。次亜塩素酸ナトリウムは殺菌力が強いので、こっちの方が微生物が少ないだろうと普通考えてBを(2)の7万、Cを(3)の600と答えるのですが、実は逆です」(矢部氏=以下同)

 中性洗剤(界面活性剤)は、有機物と無機物どちらもきれいにする洗浄力に優れている上に、水の表面張力を落とす力がある。そのため、無数の傷がついたまな板の傷の間にまで入り込み、微生物を洗い流せる。一方、次亜塩素酸ナトリウムは殺菌効果に優れているものの、洗浄力がなく、水の表面張力も落とせない。一部の微生物は殺せても、まな板の傷の奥に潜む微生物を殺せず、それらの微生物がまた増殖してしまう。結果、せっかく洗っても微生物を取り除いたことにはならない。

「感染防止清掃では、ウイルスなど微生物は1匹でも残っていたらダメです。だから、きれいにして殺菌するのが最も効果が高い。コロナ対策でも、これはぜひ覚えるべきです」

 アムテックでは、病院清掃で用いる洗剤には、洗浄力と殺菌の2つの効果を併せ持つものを使用している。家庭内感染対策でも、念を入れるなら、それがお勧めだ。

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