喘息治療がコロナ感染と重症化を抑制 2つの薬がポイントに

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 花粉が飛ぶ時季は、「喘息」が悪化しやすい。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が指摘された昨年3月以降、喘息の治療薬の処方数が減少。「コロナに感染しやすく、悪化しやすいのでは」と、受診控えをする患者が多いと指摘されている。

「喘息があっても、コロナにかかりやすいわけでもなく、重症化しやすいわけでもありません」

 こう言うのは、高知大学呼吸器・アレルギー内科学教授の横山彰仁医師。発表されているデータでは、米国や中国などの喘息罹患率は8%に対し、コロナ入院患者のうち喘息の割合は5・5%と、むしろ少ない。

 コロナの「診療の手引き」でも、コロナ重症化のリスク因子として「高齢者」「2型糖尿病」「高血圧」「喫煙」などは入っているが、喘息は含まれていない。

「コロナ感染は、コロナウイルスが人間の細胞膜のACE2受容体に結合して起こるのですが、喘息に特異的なサイトカイン(細胞から分泌される低分子のタンパク質)があると、ACE2受容体の発現が低下するといわれています。だから喘息が罹患因子にならない」(横山医師=以下同)

 むしろ、喘息の治療で吸入ステロイド剤を使い、空気の通り道である気道の炎症を抑制できていると、コロナに感染しにくく、重症化しにくいともいわれている。

 一方で、喘息患者の中には「今は症状がないから喘息の薬を飲まなくてもいい」と思っている人もいるだろう。しかし、それは間違いだ。

「喘息の症状は氷山の一角。喘息は症状がなくても、気道の炎症が常にある病気なのです」

 喘息の症状である咳、痰、息苦しさ、「ぜーぜー、ひゅーひゅー」という喘鳴は、花粉、風邪などのウイルス感染、たばこの煙、気温差、気圧の変化、日内変動、体内ホルモンの変動などで生じる。喘息で常に気道が炎症を起こしていると、気道が敏感になり、ちょっとした刺激によって気道の平滑筋が収縮し、気道が狭くなるからだ。

「表面に出るのは症状だけですが、ベースには気道の炎症があります。炎症をしっかり取ることが、喘息の治療では非常に重要なのです」

■治療の一時中断は難治化を招く

 受診控えで喘息の治療がストップしてしまう問題点はさらにある。気道のリモデリングが起こるリスクが高くなるのだ。

「リモデリングとは、喘息治療の中断や放置などで炎症が長期に続くことで気道の線維化が進んで硬くなり、気道が狭くなったまま元に戻らなくなる状態を指します。リモデリングが起こると喘息が難治化し、薬が効きづらくなります。呼吸機能は誰でも年齢とともに低下しますが、そのスピードが速くなり、年を取ってから呼吸困難などで苦労することもあります」

 喘息は効き目の良い薬が複数登場しているが、それにもかかわらず喘息で死亡する人がいる。リモデリングが関係している可能性は大きい。

 喘息治療はまず、吸入ステロイド薬をはじめとする「長期管理薬(コントローラー)」を毎日投与すること。繰り返しになるが、症状がなくても気道の炎症を抑えるために使用する。

 次に、喘息発作が出た時には、気道を広げ発作を鎮める「発作治療薬」を投与する。

「20歳を越えてからの喘息は寛解しづらい。基本的に長期管理薬は生涯使うことになります。しかしそれによって、健康な人と変わらない生活を送れます」

 しばらく治療を受けていない人、コロナでストップしていた人は、今すぐ再開を。

 なお、喘息と混同しやすい病気にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)がある。喘息だと思っていたら実はCOPDだったという人や、両者が合併している人もいる。COPDはコロナ重症化のリスク因子でもあるので、自己判断せず、医師の適切な鑑別診断が必要だ。

関連記事