コロナ後遺症「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」を疑う症状

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの後遺症として注目を集めているのが「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」だ。ME/CFS治療・研究の第一人者である国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部部長の山村隆医師に話を聞いた。

「ME/CFSは原因がはっきりと分かっていませんが、3~4割はウイルス感染後の発症です。また、ME/CFSの患者さんの脳を特殊なソフトを使って調べると、右上縦束という部分に異常が見られることが、われわれの研究で明らかになっています」

 感染症から回復しても体内にウイルスが残っており、それに対して免疫機能が過剰に反応し、脳に炎症が起こっているのではないか。山村医師らは、ME/CFSの原因をそう考えている。

 症状は非常に多岐にわたる。一般的な検査では異常が見つからないため、診断がつくまで何年も要する人も少なくない。いまだ診断がついていない人がたくさんいることも考えられる。

 一方で、山村医師は「ME/CFSについて正しく理解している医師なら、30分ほど患者さんのお話を伺い、一般的な検査で除外診断をすれば、9割方、診断できる」と指摘する。

■「脳がどんどん壊れていく感じ」という訴えも

 ポイントは5つの中核症状(脳の異常による症状)があるか。「激しい疲労」「労作後の消耗」「睡眠障害」「思考力・集中力・記憶力の低下」「起立性不耐症」だ。

「激しい疲労とは、厳密には“疲労”というのとはちょっと違い、歯ブラシを持つのもつらい、食事ができない、シャンプーすらできないといった状態です」

 労作後の消耗は、少し体調が良くなったからと出社して仕事をしたり勉強をしたりすることで、数時間後から翌日には寝たきりになるほど消耗するもの。

 睡眠障害も普通の「眠れない」レベルではなく、「何日間も眠れない」「眠れても1~2時間ほど」。

「思考力・集中力・記憶力の低下は、本も読めない、携帯電話の番号を思い出せない、自分の名前の難しい漢字を書けない……。『脳がどんどん壊れていく感じ』と表現した患者さんもいます」

 起立性不耐症は立ったままだと心臓がドキドキして目まいがするなどし、作業困難になること。

「周辺症状もあります。関節痛や筋肉痛、微熱が続くなどの体温調節障害、下痢や便秘の消化器症状、光や音、匂いへの過敏性です。周辺症状がすべて揃うことは多くありませんが、5つの中核症状に加え周辺症状が3つほど当てはまるようなら、ME/CFSの可能性が高い」

 患者は女性が多く、男女比は1対3ほど。患者の年齢層は幅広く、若い患者では中高生もいる。 現段階では、確立された治療法はない。ME/CFSの治療に取り組むそれぞれの医師がさまざまな治療成果を発表し、情報を共有して患者の症状改善に努めている。

「代表的なものでは、漢方薬、心不全の治療でもある体を温める和温療法、耳鼻咽喉科の医師が積極的に行っている上咽頭擦過療法などがあります。対症療法になるため、睡眠薬、胃腸薬、ステロイド、免疫抑制剤などを使用することもあります。経験の蓄積で治療の選択肢は増えている。数年前の情報は古く、かえって症状を悪化させる結果につながりかねません」

 コロナ感染後、ME/CFSを疑う症状が出てきたら……。

「ネットで最新の情報を徹底的に探し、ME/CFSかもしれないとなったら、ME/CFSに関心を持って診療している医師がさまざまな地域にいるので、早い段階でそちらを受診を」

 繰り返しになるが、古い教科書に掲載されているME/CFSの治療法を活用するのは危険だ。

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