世界中で新型コロナウイルスのワクチン接種が進むのと同時に、変異株の感染拡大が報告されている。各ワクチンメーカーは変異株への有効性を検証しているが、果たしてワクチンは効くのか――。
3月4日発表の「Nature Medicine」によると、米ワシントン大学医学部のMichael Diamond氏らは「変異株が多数を占めるようになるにつれ、これまでに開発されたワクチンや抗体ベースの治療薬が効きにくくなる恐れがある」と懸念しているという。現在、変異株として報告されているのは、おもに「イギリス変異株」「南アフリカ変異株」「ブラジル変異株」「フィリピン変異株」と日本の「国内変異株」である。
【Q】世界で承認済みワクチンの効果。変異株だと弱まるのか
【A】「検証は現在も進行中ではありますが、各社が報告を出しています。それによるとファイザーは自社製ワクチンについて、イギリス、南アフリカ、ブラジルの変異株に対する中和効果が90%近くとしています。同社は実験で、各変異株のスパイク部分と同じ遺伝情報を持つ人工合成されたウイルスを使用、接種者の抗体からウイルスの中和作用があるかを調べました。モデルナは、イギリス変異株について、効果に大きな影響がないことを報告しています。ただし、南アフリカ変異株の効果については、従来型に比べてかなり低下。アストラゼネカも、イギリス変異株では従来型ウイルスの効果と同等としていますが、南アフリカ変異株への効果は不明瞭な点があると報告しています」
【Q】毎年のように変異があるインフルエンザは、どのようにワクチンを開発しているのか
【A】 インフルエンザは1943年にA型、45年にB型のワクチン接種が始まった。
「インフルエンザはA型、香港型、ロシア型など変異が激しいため、毎年流行が予測される4つの型を混合したワクチンを作り、接種することにしています。予想通りにならない年もありますから、有効性はせいぜい4~5割とされています。それでも毎年一定の効果があるとして、世界中で接種されている。その点から考えても、ファイザーをはじめ新型コロナウイルスのワクチンは現時点で、変異株の有効性が合格点にあると思います」
【Q】アナフィラキシー症状は国内17例のすべてが女性。米国でもファイザーのワクチン接種後に症状が出た人の94%が女性だった。モデルナでは100%である。なぜか
【A】「可能性として、たとえばファイザーのワクチンには『ポリエチレングリコール』という合成化学物質の成分が入っています。mRNAの成分を保護する役割があり、ワクチン効果を強めます。一般的には無害の物質ですが、この副反応としてアレルギー症状が出ているという見方があります。口紅やハンドクリーム、カプセル状の薬にも使用されているため、女性の方がこの物質に対して抗体(Ige抗体)を持っていて、拒絶するのではないか。ただし、アナフィラキシー症状は抗ヒスタミン剤を投与することで、改善します。仕組みを学んでおき、過度に恐れないことが重要だと思います。死者は出ていません」
香港では、中国製薬大手シノバック・バイオテック製ワクチンの接種後、死者が出た。中国製は、他にシノファーム製の計2種類ある。いずれもウイルスをホルマリンで殺し精製したワクチンだ。「東京五輪の出場選手に提供したい」という声もあったが、なぜ大量に作れるのか謎も多い。
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