胃がんを本気で早期発見したい…バリウムではなく胃カメラを

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 胃がんは早期発見・早期治療で完治も可能だ。しかしがんの死亡率の中で男性2位、女性4位。決して低くない。

「私が研修医だった20年前は、胃がんが見つかった患者さんのステージは1期から4期までさまざまでした。しかし現在は、ごく早期に見つかる患者さんか、あるいは末期のステージ4近くで見つかる患者さんか、二極化している印象です」

 こう話すのは、埼玉県蓮田市の中核病院、蓮田病院消化器外科の前島顕太郎医師(同病院理事長)。ごく早期で胃がんが見つかった患者は、定期的に人間ドックや胃カメラ(内視鏡)検査を受けており、治療で完治する人がほとんど。

 一方、ステージ4近くで見つかった患者は完治は難しい。ステージ2や3では胃の一部またはすべて切除となって生活の質(QOL)が著しく下がったり、予後がいい状態とはいえない人が少なくない。

「胃がんは治療技術が確立されており、ステージ3A(ステージ3はA、B、Cの3つに分類)であっても、手術と抗がん剤で5割ほどは完治が期待できます。それなのに胃がんの死亡率が高いのは、早期発見のチャンスを逃している人が多いことが挙げられます」(前島医師=以下同)

 胃がんは、胃痛や胸焼けといった何らかの症状が出てくるのは進行してから。早期では自覚症状がない。つまり「胃の調子はまったく悪くない=胃がんでない」ではない。

「胃がんを早期発見するには、胃カメラの検査しかありません。バリウム検査でも不十分です」

 会社や自治体の健診・検診では胃カメラかバリウムか選択できる場合があるが、「バリウム検査では見つけられない早期胃がんもある。本気で胃がんを早期発見したいなら胃カメラ」と前島医師は強調する。ちなみに、蓮田病院では行政の検診以外、胃がんチェックはすべて最初から胃カメラ検査だ。

■注射1本でOKのABC検査はリスクチェック向き

 胃カメラは痛いから受けたくないという人もいるだろう。その前段階の検査として、ABC検査がある。ピロリ菌抗体価と、胃粘膜の萎縮度を示す物質ペプシノゲンの値を調べる検査だ。注射1本で済むので体への負担は少ないが……。

「ABC検査は胃がんリスク検診であって、胃がん検診ではありません。胃がんを起こす確率がABC検査で低いとなっても、あくまでも“確率”で、胃がんではない、とはいえない」

 やはり胃カメラ検査を受けるしかないのだ。

 胃がんを早期で発見するための理想的な流れとしては、まず胃カメラ。胃カメラで慢性胃炎(萎縮性胃炎)がなく正常な状態であれば、3~5年に1回、胃カメラの検査を受ける。

 胃カメラで慢性胃炎(萎縮性胃炎)が判明したら、胃がんの最大のリスク要因であるピロリ菌が胃粘膜にいる可能性が高いので、その検査を受ける。

 慢性胃炎がある場合、ピロリ菌検査は保険適用だ。ピロリ菌がいたら除菌治療となる。

「慢性胃炎があれば、ピロリ菌除菌治療後も、毎年胃カメラで胃がんのチェックをしてください。除菌しても、ピロリ菌による胃の粘膜の萎縮がすでに起こっているので、胃がんのリスクが高い状態は変わりません。むしろ除菌後の胃がんは見つけづらい。だから毎年胃カメラを受ける必要があるのです。もし今年見逃しても、翌年見つけられれば完治が見込めます」 なお、胃カメラは鎮静剤の使用によってつらさを大幅に軽減できる。

 胃カメラの検査時に鎮静剤を使用するか否かは病院によって異なるので、胃カメラを少しでも楽に受けたいと思う人は、事前に問い合わせるといい。

■予防も重要

 胃がんは予防も重要。前島医師が挙げるのは以下の通り。

●減塩
●お米の食べ過ぎを避ける
●熱い食べ物や飲み物を無理してかき込まない
●薫製や干物は控えめに
●緑黄色野菜を積極的に
●禁煙
●暴飲暴食をやめる
●夕食は就寝3時間前までに。夜遅く食べる時は、消化に優しいものを


 ひとつでも多く守れるものを増やそう。

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