Dr.中川 がんサバイバーの知恵

気になるホクロを見つけたらコインと一緒にスマホで撮影を

ヒュー・ジャックマン
ヒュー・ジャックマン(C)日刊ゲンダイ

 東京は、初夏を思わせる毎日です。日増しに日差しが強くなる中、気になるニュースが報じられました。俳優のヒュー・ジャックマン(52)が、皮膚がん検査を呼びかけているのです。

 インスタグラムの投稿によると、耳たぶから病変を摘出して生検を受けたところ、前がん状態だったといいます。何度も皮膚がんを切除していますが、何事もなかったことから、改めて検査の大切さを伝えたかったのでしょう。

「医師や専門家に診てもらったときに『肌のチェックをしてくれますか?』と言ってほしい。最低でも1年に1回」

 さらに「君も僕のように若いころ何も知らずに日焼け止めを使わず、オーストラリアの日差しを浴びていたら、より一層検査を受ける必要がある」と警告しています。

 紫外線を浴びると、日焼けするほか、皮膚がんになりやすいことはご存じでしょう。日焼けにナーバスな人が読んだら、不安になりそうですが、それは豪州の話。日本人をはじめ東洋人はそこまで気にする必要はありません。

 そういえるのは、皮膚がんの一つメラノーマの発症部位にも関係があります。好発部位は足の裏で、紫外線の影響をほとんど受けません。

 一方、豪州は、紫外線を吸収するオゾン層が薄い上、穴が開いている部分もあります。それで皮膚がんの原因となるUVBが地表にダイレクトに到達。皮膚がんの発生率が世界一高いゆえんです。

 紫外線との関係が明らかになり、今では豪州のがん教育に紫外線対策の重要性が盛り込まれています。「外で遊ぶときは、日焼け止めを塗りましょう」と。

 メラノーマは、紫外線などの環境因子のほか遺伝的背景がそれぞれ関わって発症します。白色人種の発生率は、有色人種よりも数倍高く、紫外線の強い地域に住む白色人種の発生率はさらに高いという報告も。

 その点、日本人は有色人種でオゾンの問題もありません。豪州は白色人種が多く、オゾンの問題も重なりますから、ダブルパンチです。

 比較的皮膚がんのリスクが低い日本でも、海辺のバーベキューや登山などで長い時間大量の紫外線を浴びるときは、紫外線対策をするのが無難。通勤や少し散歩に出掛けるくらいならそこまで気にせず、紫外線を浴びてください。紫外線対策はほどほどが大切です。

 免疫に重要なビタミンDは、紫外線によって合成されます。ビタミンDは食事で補いにくいため適度な日光浴が欠かせないのです。血中のビタミンD濃度が低いと、がんになりやすいという報告もありますから。

 ほどほどの対策で紫外線とうまくつき合いながら、足の裏などをセルフチェックするといいと思います。新しいホクロなど気になる点を見つけたら、コインと一緒に携帯などで撮影。2~3カ月後に変化を確認するのです。大きくなったり、形が変化したりしていれば迷わず皮膚科を受診するといいでしょう。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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