新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は各都道府県知事宛てにイベント(催し物)の開催制限や施設の使用制限などに関する事務連絡を発出しています。各自治体はこの事務連絡に基づいて、イベント開催時における感染対策上の留意事項を策定しています。
とはいえ、多くの人が集まるイベントへの参加は、やはり感染リスクの心配がありますよね。そんな中、屋内イベントの感染リスクを検討した研究論文が、世界的に有名な医学誌「ランセット」の感染症専門誌版に2021年5月27日付で掲載されました。
この研究ではイベントの当日に行われた抗原検査で新型コロナウイルス陰性が確認された1047人(平均33・6歳)が対象となりました。被験者はスペインのバルセロナで実験的に開催された屋内音楽イベントに参加する群と、イベントに参加しない群にランダムに割り付けられ、新型コロナウイルス感染症の発症リスクが比較されました。このイベントでは、会場施設内の換気、施設入り口での検温、参加者に対するマスク着用を徹底するなどの感染対策が実施されています。
イベント開催から8日後にPCR検査を行った結果、新型コロナウイルス陽性だったのは、イベントに参加しない群で2人(1%未満)だった一方、イベントに参加した群では陽性者はおらず、発症率についても統計的に有意な差を認めませんでした。
この研究ではイベント開催前に抗原検査を実施し、かつ施設内の換気やマスクの着用を徹底すれば、500人規模の屋内イベントは大きな感染リスクにならない可能性が示されています。もちろん、感染者数が顕著に増加している地域での開催や、1000人を超えるようなイベントでは、より慎重な対応が必要でしょう。
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