「コロナ感染対策」の勘違いを改めて見直す 変異株も続々出現

必要量をプッシュすること
必要量をプッシュすること(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナワクチンの接種が進んでいるが、2回接種を終えたとしても安心できるわけではない。現在のワクチンは「発症」を防ぐ効果は高いといわれるが、感染そのものを防ぐかどうかはまだ確定していない。接種後に感染したケースは多く報告されているし、ワクチンが効きにくいといわれる変異株も出現している。接種後もまだまだ感染対策を続ける必要があるということだが、いまや当たり前になっている対策が勘違いされているケースも少なくないという。長久堂野村病院(広島県広島市)の診療支援部薬剤科科長で、感染制御認定薬剤師の荒川隆之氏に聞いた。

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 感染制御認定薬剤師とは、日本病院薬剤師会から「感染制御に関する専門知識と技術を有する」と認定された薬剤師である。その資格を持つ荒川氏がまず疑問に思っているのがアルコール消毒だという。

 コロナ禍での生活では、店舗や施設に入る前に入り口に設置してあるアルコール消毒液をプッシュして手指に擦り込む行為が当たり前になっている。新型コロナウイルスは、アルコールによって膜を破壊して無毒化できるタイプなので効果があるのは間違いないが、正しく実践しないと意味がない。

「アルコールで手指消毒する際、ホコリ、砂、油などの目に見える汚れがある場合は、まず汚れを洗い流してからでないと最大限の効果は望めません。また、プッシュ式のアルコール消毒液は、グッと最後まで深く押し込んだ場合に1回分の必要量が出てきます。多すぎると感じるかもしれませんが、手のひらや甲をはじめ一本一本の指や爪の間、手首まで擦り込む正しい方法を行うとちょうど使い切るだけの量になっているのです。ちょっとだけプッシュして、少量を擦り込んでいる人がほとんどですが、これでは意味がありません」

 消毒用アルコールと一緒にペーパータオルを用意してある施設も見かけるが、手に付着したアルコールを拭き取ってしまっては何にもならない。「アルコール=エタノールの濃度も重要で、70%前後が目安です。CDC(アメリカ疾病対策センター)は60~95%のエタノールが最も効果的だとしています。いまはそうでもありませんが、以前は濃度が低いものも出回っていたので、購入する際はしっかりチェックしましょう。また、アルコールではなく、果物のエキスなど科学的根拠がない成分を主にした消毒液も見受けられます。効果は望めないので注意が必要です」

■空間噴射で効果のある濃度は人体に影響

 空間に噴霧するタイプの消毒も疑問が多いという。

「CDCは『消毒剤の空間噴霧は、空気や環境表面の除染方法としては不十分』としています。1年ほど前には、オゾンによるウイルス対策が話題になりましたが、大きな効果は期待できません。オゾンが殺菌作用に優れているのはたしかですが、ウイルスを不活化させるには人間が死亡するくらいの高濃度にする必要があります。人体に影響を与えない微量のオゾンを発生させる機器では、ウイルスを死滅させることはできないのです。ですから、店舗や家庭に一般的なオゾン発生器を設置しても安心はできません。また、二酸化塩素分子や次亜塩素酸水などの成分で空気中のウイルスを除去する置き型タイプの商品も、閉鎖した狭い空間で長時間使用しなければ効果は望めません。換気しているうえに人間がいる生活環境では期待できないと考えた方がいいでしょう」

 ほかにも、手袋を装着して商品の受け渡しやレジ打ちをしていても手袋が汚染されていたらまったく意味がない。会計の際に金銭をトレーに置いてやりとりする行為は、本来は店員と客の距離を保って飛沫感染を防ぐ目的で行われるものだが、最近は距離は無視され、手と手が触れないようにするために行われている印象だ。もちろん、それでは感染対策にならない。

 せっかく感染対策をするのなら、あらためて何を目的に行うのかを見直し、正しい方法を実践したい。

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