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新型コロナの感染予防にコーヒーが良い? 栄養学専門誌で報告

写真はイメージ
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 感染症の予防に重要な免疫の働きは、食事の影響を受けることが知られています。実際、新型コロナウイルスの感染と、食事パターンに関連性を認めることを示した研究も報告されています。ただ、これまでに報告されている研究結果は、精度の高い手法で解析したものではありませんでした。

 そんな中、新型コロナウイルスの感染リスクと食習慣の関連性を検討した研究論文が、栄養学の専門誌「ニュートリエンツ」に2021年6月20日付で掲載されました。

 この研究では英国に在住している40~70歳の3万7988人が対象となりました。コーヒー、お茶、魚(魚油)、加工肉、赤身肉、果物、野菜などの摂取頻度と、20年3月から11月に実施された新型コロナウイルスPCR検査の結果が調査され、食事パターンと感染リスクの関連性が検討されました。

 なお、結果に影響を与えうる年齢、性別、教育水準、雇用状態、喫煙状況などの因子で統計的に補正して解析しています。

 その結果、PCR検査での新型コロナウイルス陽性者は、コーヒーの摂取量が1日1杯未満の人と比べて、1日2~3杯の人で8%、1日4杯以上の人で9%、統計的にも有意に少ないことが示されました。一方で、他の食材では明確な関連性は示されませんでした。

 この研究では、コーヒーの摂取頻度と新型コロナウイルスの感染リスクにわずかながら関連性を認めています。とはいえ、食事の内容はさまざまな生活スタイルや環境と密接に関連しており、コーヒーそのものが直接的に感染リスクを低下させているわけではないように思います。現時点ではワクチンの接種、そして適切な感染対策を励行することが、感染予防に効果的と考えた方がよいでしょう。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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