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「水疱性類天疱瘡」は湿疹や蕁麻疹と誤診されると重症化の恐れ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 水疱性類天疱瘡は、皮膚や粘膜に水ぶくれ、びらん、赤い皮疹ができる病気です。

 糖尿病の治療薬など特定の薬が原因となるもの、がんに伴うものなどいろいろな種類がありますが、大半は自分で自分の免疫を攻撃してしまう自己免疫疾患。この場合、原因は明らかでなく、治療法も確立されていないため国の指定難病となっています。患者は70~90代の高齢者に多く見られます。

 症状は、痒みを伴う水ぶくれ。初期は湿疹や蕁麻疹と似ており、正確な診断がされないケースも珍しくありません。診断には皮膚を一部取って調べる必要があります。

 痒いからとボリボリ引っかいたりすると、表皮に傷ができ、そこから細菌が入って感染症を引き起こしやすくなります。誤診や治療開始の遅れで、重症化したり、なかなか治らなくなることもあります。ある高齢の患者さんが私の元に来たときは、すでに皮膚がずるむけで、水疱が潰れて水がどんどん流れ、水不足とともに栄養不足になっていたことがありました。

 重症の場合は入院してもらい、水疱を一つ一つ潰して、傷口を洗浄し、薬を塗って包帯を巻くという手当てをします。内服薬や点滴による治療も必要です。そして不思議と、ここまでの症状になるのは夏場のことが多い傾向にあります。

 治療はステロイドの外用薬や内服が中心で、炎症を抑えて、抗体ができないようにしていきます。ステロイドのみで症状が抑えきれない場合は免疫グロブリンを大量に注射する方法もあります。それでも効果がなければ抗体を血液ごと除去する、血漿交換療法を行うこともあります。これは大掛かりな治療法となりますが、極端に言えば、ここまでしなければ症状が治りにくい病気でもあるのです。

 さらに厄介なのがステロイドによる治療の副作用です。高血圧、免疫力の低下、骨粗しょう症、うつ病などさまざまな副作用があります。また、ステロイドには食欲増進という副作用があり、糖尿病の患者さんにとっては悩ましいものです。しかも、高齢の方が悪化して入院治療をするとなると、入院中に足腰が弱って寝たきりになるリスクが上がります。

 ですから、湿疹が出始めた初期の段階で正しい治療に入ることが、とても大切なのです。

 早期に治療を始めると寛解に近い状態まで持っていくことも可能です。水ぶくれができたら放置せずに皮膚科にかかること。治療を受けてもなかなか良くならない場合は、皮膚を取って調べることができる病院へ紹介してもらってください。

 これらが、水疱性類天疱瘡治療の重要なポイントです。コロナで病院に行きにくいとは思いますが、水疱性類天疱瘡は厄介な病気ですので、早めに皮膚科を受診しましょう。

日本大学医学部付属板橋病院皮膚科病棟医長・葉山惟大医師(皮膚科専門医)

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