コロナ太りが招く、性欲と勃起力低下・夜間頻尿・やる気の喪失

テストステロン量の低下で性欲減退も(写真はイメージ)/
テストステロン量の低下で性欲減退も(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

「コロナ太り」をそのままにしていないだろうか? それが男性ホルモン減少にもつながっている可能性がある。独協医科大学埼玉医療センター泌尿器科教授の井手久満医師に聞いた。

 ◇  ◇  ◇

「コロナ禍で懸念されるのが、活動量の著しい減少です」

 筑波大学大学院と健康機器メーカーのタニタが東京都内にオフィスがある大手企業の社員100人(平均年齢48歳)を対象に行った調査では、コロナの影響が表れる前は1日の歩数は平均約1万1500歩だったが、テレワークに切り替えた社員は歩数が29%減り、座っている時間が長くなっていた。中には1日の歩数が70%以上減少し、厚労省推奨の1日の歩数8000歩を大幅に下回る2700歩程度というケースもあった。

「結果、コロナ太りを招くわけですが、さらに活動量が低下した状態が続くと、筋肉量も低下。基礎代謝量が減少して太りやすくなります」

 それでリスクが高くなるのは、肥満、高血圧、高血糖、脂質異常だ。この4つのうち該当するものが多い人ほど、男性ホルモンであるテストステロンの量が低下。テストステロン量が少なくなると内臓脂肪型肥満に高血圧、高血糖、脂質異常を併発したメタボリックシンドロームが増えることも、研究で明らかになっている。

■男性更年期障害の引き金にも

 テストステロン量低下で生じる弊害で、“男性の更年期障害”として近年注目されているのが、「LOH症候群」だ。テストステロンは「筋肉や骨格の成長を促す」「性欲や性衝動を起こす・勃起のスイッチを入れる」「前向きな思考や決断力を働かせ、集中力、やる気を高める」といった3つの重要な働きを担う。

「テストステロン量が低下すると、これらがうまく働かなくなります」

 重症の場合、うつ状態がひどく社会生活を送るのが困難になることも。「疲れやすい」「不眠がある」「気分が沈みがち」「体調が優れない」「性欲や勃起力が減退したと感じる」「尿が出にくい、出終わるまで時間がかかる」などの症状があれば、可能性がある。

 さらにテストステロンの量の低下は、前立腺がん、尿が十分にたまっていなくてもトイレに行きたくなる過活動膀胱、心筋梗塞、骨折などとも関連があることが研究でわかっている。

「夜間頻尿とも関係しています。年を取ると膀胱の線維化が進み、頻尿、特に夜のトイレの回数が増えます。しかしテストステロンを補充すると、線維化が抑制され、膀胱の柔軟性が増します。実際、患者さんにテストステロンを補充すると頻尿が改善するのです」

 頻尿は死亡率と関係しており、東北大学が行った日本人対象の研究では、夜間頻尿が2回以上ある人が、最も寿命が短かった。

「コロナがテストステロン量低下に関与しているのは、活動量の減少だけではありません。コロナで家での飲酒量が増えた人もいるでしょう。お酒の量が多いと、テストステロン量が低下してしまいます」

 3週間毎日ビールグラス4杯飲んだグループと、ノンアルコールドリンクを飲んだ群では、歴然としたテストステロン量の差が確認できた。

 テストステロンを減らさないようにするには、ここまで挙げたことの反対を目指すべきだ。つまり、適度な運動を行ってコロナ太りを解消し、飲酒量はほどほどにする。

「場合によっては、テストステロン補充療法という選択肢もあり、LOH症候群がなかなか改善しないといった時に生活の質(QOL)を上げるために有効。長期的に投与すると、血中の赤血球が増えて心疾患や血栓のリスクが高まるため、専門外来を受診して、男性ホルモンの数値を測定してから行ってください」

 テストステロン補充療法は自費診療になるため、医療機関によって値段が異なる。

関連記事